「イタアキ、捕まったらしいな。」

「そうそう。さすが、さんだな。

 それにしても、今日は眠いなあ・・・」

「お前は今日に限らずいつもだろ。」








パンッ





静かな夜に、小さな爆発音が起こる。





その瞬間、さっきまで話をしていた屯所門番の2人が倒れ込んだ。








Zzz・・・










「ちゃんと寝てるか?」

「うん。」










恐る恐る門の内側から門番をのぞきこんだのは、泰輝と侑歌だった。


さっきの爆発音は、その2人が投げた、睡眠ガスの手榴弾だったのだ。








「じゃあ・・・行くか。」

泰輝のその言葉に、侑歌もうなずき、屯所から出て行こうと歩きだした。




















『星が綺麗だねー、総悟。』

「そうだねィ、。」



すぐ上から声がした。





屯所を囲っている塀の屋根に、と総悟の2人が寝転んでいた。










「・・・あたしたちを止めるの?」

侑歌が恐る恐るいった。





「そうだなァ・・・脱獄は立派な犯罪だからねィ。」

『真選組隊士としては止めなきゃいけないね。』


総悟、が順にいった。





うつむく佳奈を、泰輝が見つめる。










『だけど、私と総悟は今、真選組隊士じゃない。

 私は今、超可愛いただの美少女だし。』

「俺は超カッコイイただの美少年でさァ。」


「?」

侑歌は2人がなにを言いたいのか、わからなかった。










「止めないでくれるんだよ。」

泰輝が侑歌にいった。










「真選組隊士としては立場上、俺たちを止めなきゃいけないが、

 今の2人はただの少年少女「超可愛い美少女!」「超カッコイイ美少年!」


 ・・・ただの、超可愛い美少女と超カッコイイ美少年だから、

 止めなくてもいいんだよ。」



途中で2人のツッコミ訂正が入り、苦笑いしながらいった。










、総悟・・・ありがとう。」


侑歌は笑顔でいった。





『どういたしまして。

 ところで泰輝さん、

 売られた村人さんが今どこにいるのか分かってるんですか?』


がいった。





「いや、何人かは調べてわかっていますけど

 ・・・ほとんどわかりません。」


その言葉を聞いて、がふっと笑った。










『あれー、偶然村人たちがいる場所の最新情報が書かれた紙がここにあるー。

 はい、総悟。』


が1枚の紙を総悟に手渡す。





「ほんとだねィ。

 おーっとっと・・・」





そういって、総悟は紙を屋根の上から落とした。










落とされた紙はひらひらと宙を舞い、侑歌と泰輝の目の前に落ちた。



そして、と総悟は、2人にウインクする。





『今日は風が強いから飛んじゃったね、総悟。』

「ほんとだねィ。どこにいったんだろうなー。

 今日はもう暗いから、明日探そうぜィ。」










「ありがとう。」



侑歌が目の前の紙を拾って、いった。





「本当に、ありがとうございました。

 ・・・副長さんも。」



泰輝が屯所の中の木の方を見ていった。










それを聞いて、その木の陰から、土方がでてきた。

だが、侑歌と泰輝に視線を合わすことはなかった。










「土方さん・・・」

侑歌が土方を見て、不安そうな顔をした。





兄が逃亡するのを止められないのか、心配だったのだ。










「俺はまだ、お前らを見つけていない。

 俺が見つける前に、早く行け。」


土方がいった。





その言葉を聞いて、侑歌は安心した表情になる。










「本当にみなさん、ありがとうございました。

 みなさんに出会えて本当に良かったです。


 あんなに楽しかったのは12年前以来でした。」



そういった侑歌の目から涙があふれた。





「俺も楽しかったぜィ。」

『私も!楽しかったv」


総悟とが笑顔でいう。





「じゃあ・・・副長さんに見つかる前に、行こっか。」


その泰輝の言葉に佳奈は笑顔でうなずき、2人は歩きだした。

























「あたし、あの人たちに会えて本当に良かった。」



侑歌が目にまだうっすら涙をためて、つぶやくようにいった。



それを聞いて、泰輝は微笑んだ。















+++++++++++++++++++++++++















2人の後姿が見えなくなるまで、と総悟と土方は無言で見つめていた。



そして、後姿が見えなくなると、が口を開いた。








『土方さん、絶対に侑歌と泰輝さんのこと見つけてたよね。』


「当たり前でィ。そうじゃなかったら

《俺はまだ、お前らを見つけていない。俺が見つける前に、早く行け。》

 なんてかっこつけた独り事いうなんて、頭イってるぜィ。

 あ、イってたか。マヨネーズにやられたか。」



『もう手遅れだね。

 てか見つけてるのに止めないなんて、副長失格じゃん?

 これで、総悟が副長になれるね!』


「やったぜィ!これでは1番隊隊長でィ!」





と総悟の会話を聞いて、土方の頭にはムカムカマークが浮かんだ。



そして、土方が静かに口を開く。





「お前ら・・・死ぬか?」








『「お前が死ね。」』


と総悟がハモっていった。















「〜〜ッ、お前らいい加減にしやがれ!切腹だ、切腹!」



静かな夜に、土方の怒鳴り声と、と総悟の笑い声が響く。






























『久しぶりに落ち着いた、いつもの真選組の風景に戻ったね。』

がいった。





「いつもの風景ってなんだ!

 俺がバカにされているのが《落ち着いた、いつもの風景》だっていうのか!?」










24話続いた連載の最後に、と総悟から1言どうぞ。





『「俺(私)たち真選組は、これからも国民の幸せのために頑張ります!」』



「シカトォォオ!?」















・・・―――こんな感じで、真選組によって江戸の平和は守られている。

























*************************

無事、完結いたしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
感想などをメールで送っていただけると泣いて喜びます。