俺はこれからどうすればいいんだろう・・・
侑歌はもう1年前に売られた先
―――麒麟を抜け出していた。
侑歌は今、どこで何をしているんだ・・・?
侑歌は俺のことをどう思ってるんだろう・・・
山間村を襲った時、リーダーが俺の妹に会った、と言っていた。
ということは、侑歌は俺が村人狩りに協力していると思いこんでいるはず・・・
まあ、事実といえば事実か・・・
そうなると、侑歌は俺に復讐しようと考える・・・か?
いや、侑歌の性格から考えてそれはない、か・・・
侑歌の場合は正義感が強いから、復讐という形じゃなくて・・・
そうだなあ、なんだろう・・・
やっぱり・・・警察として逮捕しようとする、か・・・?
そう考えた俺は、いろんな天人や攘夷の組織を転々として侑歌の情報を集めた。
とは言っても、ほとんど集まらなかったが。
そうして4年ほど経って、俺がある攘夷組織にいたとき、
真選組に新しく隊士が1人入隊したという情報が入った。
まだその隊士が侑歌と決まったわけじゃない。
だが・・・調べる価値はありそうだな。
この組織使ってちょっと調べるか・・・
その攘夷組織というのが―――岡中だった。
俺は、真選組にわざと捕まる役と、
その捕まったスパイが真選組の気を引いている間に役割を果たす
2人のスパイを送り込み、
食堂と会議室と局長室の屋根裏に盗聴器をつけさせた。
会議室と局長室は、真選組の計画や予定を調べるために仕掛けたが、
食堂に仕掛けさせたのは
―――新入隊士が侑歌かどうか調べるためだった。
岡中たちは俺の作戦の理由も聞かず、従ってくれるから扱いやすい。
そして俺は、記憶の片隅にある
当時6歳の侑歌の声と新入隊士の声を比べ、似ている・・・そう思った。
そして、その隊士の名前が《浅真泰輝》だと知ったとき
―――その隊士が侑歌だと確信を持った。
岡中が真選組に斬り込みに行った様子を、俺は近くの高い建物で見ていた。
そしてその中に見つけた―――12年間探し続けた妹の顔を。
俺が知っているのは6歳の佳奈。
双眼鏡越しに見えるのは18歳の佳奈。
顔つきは変わっているが、面影は残っている。
「侑歌・・・」
俺の目からは自然と涙がこぼれ落ちていた―――
そんなとき、1人の隊士が俺のほうを見ているのに気がついた。
涙を急いで拭いて、確認のため双眼鏡をのぞいた。
そして双眼鏡越しにその隊士と目が合う。
「こっちが見えてんのか?
いや、それはないか。500mは離れてるしな・・・」
その目が合った隊士というのは――――― だった。
それから俺は真選組のことを調べ始めた。
局長は近藤 勲。
お人よしで剣の腕もよく頼られているが、頭の方が弱い。
副局長は土方 十四郎。
真選組の頭といわれ、冷静。
新入隊士―――侑歌は1番隊に入ったそうだ。
1番隊といえば、隊長は《沖田 総悟》、
副隊長は《 》という若い頭が率いる隊だ。
沖田 総悟は、18歳と若いが、真選組一の剣使いとされている。
は、15歳で唯一の女隊士―――まあ、侑歌も女だが。
そしてIQ200以上の天才。剣の腕も一流。
、か・・・
このデータでは視力が6,0となっているから
岡中のときは本当に目が合ってたんだ・・・
IQ200越え、か・・・―――俺とどっちが上かな?
・・・利用させてもらおう。
「・・・そのあとは、みなさんがご存知の通りです。」
「なんで自首しなかったの?」
話を聞き終えた侑歌が、泰輝に言った。
初めて侑歌が兄―――泰輝に言った言葉だった。
彼女の目には涙がたまっていて、今にもあふれだしそうだった。
「迷ったんだ・・・
俺が抜けた黒豹族が真選組に捕まって、
そいつらから売った相手の天人を聞きだし、
真選組が売られた村人たちを助けることが出来る
―――そう思ったけど、治外法権ってやつで、黒豹族は罪に問われなかった。
だから、村人たちを助けることは出来なかった。
そうなると、俺が自首して牢屋に入っても、
売られた村人たちはなにも変わらないだろ?
だからいろんな天人組織をまわって売られた村人たちを探して、
助けに行こうと思ったんだ。」
泰輝が悲しそうにいった。
「じゃあ・・・じゃあなんで今更捕まったのッ?・・・」
侑歌の目から、ついに1つぶの涙がこぼれ落ちた。
「それは・・・どうしても侑歌に会って謝りたかったんだ。
―――――悪かった。」
その言葉を聞いた瞬間、侑歌の目から大粒の涙がたくさん流れた。
彼女は手で顔をおおう。
「そんなッ・・・そんなの・・ッ・」
あたしが真選組に偽名で入隊したのは、兄をおびき出すため。
兄の名前を使っていれば、兄が接近してくると思ったから。
そして、真選組に入った理由は・・・―――
―――――警察として、兄を逮捕するため。