それから、泰輝はその《天下人》別名《黒豹族》という

女の天人がリーダーの組織に入れられた。



《浅真泰輝》という名前は売れていたため、《イタアキマサ》と名乗り、

女の天人に協力した。








その時、すでに天下人は真選組に追われていた。


そのため、頭のいい泰輝が予測した真選組が目をつけていない村


―――捕まらない村を教えていた。








また、和斗も村人狩りに直接参加していた。















「ここ・・・人の気配がする。」



「おっと、こんなところに部屋があったのか。

 見落とすところだったぜ。」





「キャー!助けて!」

「ママー!ママー!」

「どうか、この子だけでも・・・」


「さっさと来い!」





そして、村人が隠れている隠し扉なんかも見つけていた。





「さすがだなあ、天才少年。」















泰輝が気づかないフリをすれば助かった人がたくさんいた。

泰輝も自分が最悪なことをしているとわかっていた。



だが、それを止めようとはしなかった。





・・・そうやっていれば山間村だけは襲わないでいてやるって言われていたから。










泰輝にとって、山間村


―――佳奈や両親が無事であれば、他の人、村なんてどうでもよかった。















だが、2年ほど経つと黒豹族は約束を破り、泰輝に内緒で山間村を襲った。



すぐにそれに気づいた彼は、山間村に駆けつけた。















「・・・ハァ・・・ハァ・・・」










「侑歌ー!・・・母さーん!父さーん!・・・大輔ー!・・・」















・・・だが、そこにはもう誰もいなかった。




















「山間村・・・

 その村を黒豹族が襲ったときから2時間後くらいに、

 真選組は到着していた・・・」


土方がぼそっと言った。





「え?」

泰輝が驚きの声をあげる。





が・・・当時5歳だったが言ったんだ・・・」










『この村はなんで襲われてないんだろぉ?

 なにか理由でもあるのかなぁ?

 ないとしたら、ぜったいにこの村危ないよぉ〜・・・』












「その村っていうのが―――山間村だったんだ。


 そのの言葉を聞いて、すぐに真選組は駆けつけたが・・・



 ・・・もぬけのからだった。





 だが村の様子から見ても、

 まだ襲われてから3時間も経っていなかった。



 血も・・・完璧に乾いてはいなかった・・・」





当時の様子を思い出したのか、悲しそうに、悔しそうに土方が言った。



近藤も同じような表情をする。










『私、全然覚えてないや・・・』

「俺も全然知らないぜィ・・・」


、総悟が言った。








「あたしは・・・しっかり覚えてる。」



侑歌がちらっと泰輝を冷たい目で見た。





その視線に泰輝はとても悲しそうな顔をした。















『で、その黒豹族を逮捕したときに、

 そいつらが持ってた資料の1部がこれです。』





そういって、が1枚の紙をポケットから出した。










―――――――――――――――――――――――


  赤田 俊希    ¥3200000   厳豹族

  秋川 真也    ¥5000000   厳豹族

  秋川 優衣    ¥1000000   麒麟

  浅真 泰輝    

  浅真 侑歌    ¥1400000   麒麟

  浅真 絢子    ¥800000    大蛇族

  浅真 大輝    ¥2500000   厳豹族

  今井 那央    ¥950000    大蛇族 

         :
         :




――――――――――――――――――――――――















『たぶん住民票に、売った相手と値段を書き足したものでしょう。



 そして、これを見て、隣になにも書かれていない

 《浅真泰輝》は売られていないと分かって、

 《イタアキマサ》と《アサマタイキ》の名前の関係性に気づいて・・・



 9割この《浅真泰輝》という人物が《イタアキマサ》だと確信しました。


 んで、同じ名字の女の子が《浅真侑歌》って名前だから、

 侑歌ちゃんって分かったんだよ。』



そう言って、は侑歌の方を向いてニコッと笑った。










「でも、もう1人《浅真》って名字で女の名前がいるぜィ?」


総悟が言った。





『泰輝さんと侑歌の母親でしょ。

 まー、どーやって判断したかっていうと、売られた値段だよ。


 女は肉体労働もできないから基本的に安いんだけど、

 若い女は風俗にでも売るか、通わせて給料を取ればいいから、

 それなりの値段はつく。


 9歳の子を持つの女はもう、風俗で働かせられないから安くなる。


 そして、当時8歳でも、ロリコン好きの変態野郎もいるし、

 育てて風俗にやればいいから、安くはないんだよ。



 だから、売られた値段が高い方が、妹だって判断したわけ。』


それを聞いて、総悟、近藤、土方は納得顔になる。








『それから、この資料と一緒に村人全員の写真が出てきました。


 ま、もちろん泰輝以外でしたけど。


 そのときの《浅真侑歌》と書かれた写真は・・・



 ・・・泰輝―――いや、侑歌そっくりで・・・


 まー、本人だから当然ですけど。

 そのときに、もしかしたら・・・って思ったんです。』


はそういって、侑歌の方を見る。


彼女は、の視線を受け、苦笑いをした。










「じゃあ・・・なんのために侑歌はここにいるんでィ?

 なにか目的があってだろィ?」


総悟が侑歌を見つめた。





「それから、組織を抜けた後、お前はどうしたんだ?」


土方が泰輝を見つめた。




















誰もいない山間村に着いた泰輝は、2年間



―――天人に協力するようになってから我慢していた感情が一気にあふれた。















「・・・ッ・・・ゆッ・・・ゆうかぁ・・・ッ・・・」








「・・・こんなッ・・・こんなのってッ・・・」










当時9歳の泰輝には残酷すぎる現実がつきつけられた。








「・・・このッ・・・2年間・・・何だったんだよ・・・ッ」





「・・・なんのためにッ・・・誰のッ・・・ために・・・」








ただ侑歌のことだけを思って、何人もの村人を見殺しにし、苦しめてきたのに・・・



侑歌も、その俺に見殺しにされ苦しむ人と

同じ道をあゆむことになってしまうなんて・・・








俺は何人の人生を奪ったんだろう・・・





何人の未来を奪ったんだろう・・・








俺は最低だ・・・





俺は・・・










・・・・・・失うものはもう何もなくなった。




















その後、泰輝はわざとらしく机に真選組が張り込みしてる村


―――襲えばすぐに捕まる村の名前を書いて、天下人を抜けた。








天下人はその机の村の名前を見て、まんまと泰輝の罠にかかり、真選組に捕まった。










組織を抜けた後、泰輝は侑歌がどこに売られたのかを必死で調べた。





そして、やっとの思いで見つけ、そこへ行ってみたが・・・


侑歌はもう逃げ出して、そこにはいなかった。








侑歌が売られてから7年も経っていて、和斗は16歳になっていた。







最後に侑歌を見たのは・・・俺が買い物を頼まれた9年前だ。

今、侑歌はもう15歳か・・・


今はどんな顔をしているんだろう・・・








泰輝の頭の中には、6歳のときの侑歌の笑顔が浮かんでいた。