「これで全部か?」
土方が目の前で縄でしばられている大勢の男たちを見て言った。
斬り込みを警戒していた真選組にとって、
辰星を全員捕まえるのに、そう時間はかからなかった。
「おい、はどこにいるんだ?」
土方が隣にいる総悟に言った。
「知らないでさァ。
確か、辰星が来る少し前から見回りに行ってまさァ。」
「ったく。こんなときに・・・」
「こんなときだからこそ、じゃないですかィ?」
『たっだいまー。』
「おっかえり・・・」
「おい、お前今までなにして・・・」
総悟と土方は、が男を連行しているのを見て言葉につまる。
「・・・誰だ?それ。
前に逃げた万引き犯か?」
土方がにきく。
『違いますよ。イタアキマサです。』
「へえー、そうなのかィ。」
「ご苦労だったな。」
「「って、イタアキマサァァア!?」」
『うん。』
2人はに連行されている男を改めて見た。
「・・・こんなに若かったんですかィ?
俺はもっとおじさんかと思ってましたぜィ。」
「俺もだ。」
『そうだったんスか?
私はだいぶ前から若いって分かってましたけどね。
確か19歳・・・ですよね?』
そのの問いに、イタアキがうなずく。
「まあ後でゆっくり取り調べしてやるよ。覚悟しとけ。」
土方はそう言って、山崎を呼んだ。
「コイツは頭がいいから、逃げられないようにしっかり見張っとけ。」
「はいよ。」
そういって山崎はイタアキを取調室へ連れて行った。
『オツザキは逃げようとしないと思いますよ。』
が連れて行かれるイタアキを見ながら言った。
「なぜだ?」
土方がを見て言う。
『後で全部説明します。
なんで私がイタアキを捕まえられたか、というのも。』
「それじゃー、オツザキの取調べに行きますかィ?」
『おう!』
「そうだな。行くぞ。」
そういって、3人は取り調べ室に向かった。
「お前がイタアキマサだな?本名か?」
取調べ室ではイスにイタアキが座っていて、
向かいのイスには土方が座っていた。
総悟とは並んで、横の壁にもたれかかっていた。
『すいません、ちょっといいですか。』
が土方に言った。
「なんだ?」
『泰輝を呼んでください。』
その言葉に、土方と総悟は困惑の表情になり、イタアキは動揺した表情を一瞬見せた。
「なぜだ?」
土方が理解できない、といった顔でに言った。
はその問いに答えずに、視線をイタアキに向けていた。
「山崎ー、泰輝を・・・
おお、泰輝。ちょうど良かったぜィ。
中に入ってくだせェ。」
総悟が、廊下にいる山崎に泰輝を呼びに行かせるため、ドアを開けた。
すると、ドアの前では山崎と泰輝が話をしていた。
「イタアキマサが捕まったって本当ですかッ!?」
泰輝は明らかに動揺しながら、部屋に入ってきた。
「「ッ!?・・・」」
泰輝が部屋に入ってきた瞬間から、イタアキと泰輝が見つめ合って沈黙が続いた。
2人の表情は驚きが隠しきれず、言葉にならない、といったもので、
泰輝の目にはうっすら涙が浮かんでいた。
その様子を土方、総悟は困惑の表情で、は微笑んで見守っていた。