「時間だ。行くぞ。」
一人の男が後ろにいるたくさんの男たちに言った。
そして、《真選組屯所》と書いてある門に近づいていく。
「きッ、貴様ら何者だ!?」
屯所の2人の門番が男たちに刀を向ける。
キーン
門番の隊士と、1人の男の刀がぶつかる。
もう一人の門番も、他の男の刀を受け止めた。
それを合図に、その他の大勢の男たちは屯所の中に流れ込んだ。
「来たか。」
土方は部屋で刀の手入れをしていた。
「まさか本当に来るとはな・・・」
土方はそうつぶやいて、
これから斬りあいが出来ることが楽しくてたまらない、
といった顔で刀を片手に部屋を出て行った。
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「ついに始まったか・・・」
ある建物から、真選組屯所を双眼鏡で見ていた1人の若い男がつぶやいた。
「!?」
男は背後に気配を感じ、後ろのかべをにらみつけた。
『自分が立てた計画が、ちゃんと成功してるか見物ですか?』
男がにらみつけていた場所から出てきたのはだった。
「真選組・・・」
『初めまして。 です。
イタアキマサさん・・・ですよね?』
しばらくの間にらみ合っていたが、突然男がふっと笑った。
「どうしてそんなことが言える?」
『こんなところから真選組屯所を
わざわざ双眼鏡で見ている人なんて滅多にいませんよ。
今日、真選組にどこかが斬り込んでくるのを知っていないかぎりは、ですけど。
それに、前に岡中が真選組に斬り込んできたときも、
あなたここで見てましたよね?
そこまで偶然は重なりません。
そして、岡中の件に関わっていて、
今回の辰星に関わっているのは、ただ1人。』
「イタアキマサ、つまり俺ってことか。」
『認めるんですか?』
「悪あがきはしないタチなんで。」
『おとなしく捕まってくれますか?』
「もちろん。
逃げようにも、あなたと戦って勝てるとは思わない。」
『めずらしいですね。
私みたいなガキの女の子を見て、《勝てると思わない》なんて。』
「真選組に無知識で挑んでるわけじゃないよ。」
『ちゃんと調べはついてるってことですか。』
「ああ。そっちも、俺のこと調べてんだろ?」
『まあ、調べられるだけは調べましたけど・・・』
「ま、いーや。
それより早く俺のこと、捕まえれば?」
そう言ってイタアキが出してきた両手を、は彼の後ろでヒモで結んだ。
そして2人はゆっくり歩き出す。
『・・・ちょっと話をしませんか?
私が今掴んでいる情報がどこまで正しいか、確かめたいんで。』
その言葉で、イタアキはの顔を見た。
その表情は、とても複雑な顔をしていて、
イタアキはどこか安心した、嬉しそうな顔だった。