次の日。
隊士たちは、ここ食堂でいつも通り朝食をとっているように見えるが、
どこか雰囲気が急いでいる。
明日は将軍様がお出かけになる日で、今日は朝からやることがたくさんある。
いつもこの時間はまだここにいないもどこか疲れた顔でご飯を食べている。
総悟もついさっきとても眠そうな顔で入ってきての隣に座った。
そして、土方と近藤も入ってくる。
「おはよーう!みんな、今日も元気か?」
近藤が1人、場違いな明るい声でそういって、2人はいつもの場所に座った。
『ちょっと話があるんスけどいいっスか?』
が突然、小さいのによく通る声で言った。
その声で全員が顔をに向ける。
は目を閉じて、真剣な顔をしていた。
「なんだ?。」
土方が言った。
『今日、辰星組がここ屯所に斬り込んできます。
なので準備しててください。
以上です。』
その目を閉じたままのの言葉に、隊士全員の表情が一変する。
「どういうことだ?」
土方が目を見開いたまま言った。
『そのままの意味です。』
がずっと閉じていたままの目を開けて言った。
『おそらく斬り込みに来る時間は、午前中でしょうね。』
「なぜ、そんなことが言える?」
『あまり遅い時間に来ると、
明日の将軍様の護衛用の刀など準備が揃ってしまうので、午前中だと思います。』
「そういうことじゃなくて。」
たんたんと言うに、土方が少し強く言った。
「なぜ、今日斬り込みに来るとわかるんだ?
確かに、最初は今日来る予定だったが、
明日に変更されたという情報が入っただろう?」
『その情報に対して、真選組も明日動くという情報を流させました。』
「!?」
土方は驚いた顔で、山崎をにらむ。
山崎は思わず目をそらし、どこか小さくなったように見えた。
『退は悪くないですよ。
ただ上司の命令に従っただけです。』
そのの言葉に土方はため息をついた。
「ちょっと来い。」
そう言って、の腕をつかんで食堂を出て行った。
その後を、近藤と総悟も追う。
そして4人は局長室に入った。
「いつからそう思ってたんだ?」
土方がおもむろに口を開いた。
『最初に辰星の情報が入った時から、裏がある気がしてました。』
「なぜ俺に言わなかったんだ?」
『この事件は・・・
この事件は、とても奥が深いんです。
私の頭の中でも整理が全然出来てなくて・・・
話す状態になかったんです。」
こんな状態の柚は初めてみたぜィ。
たいぶ疲れてるみたいでィ・・・心配でさァ。
イタアキマサの行動が最近活発だからねィ・・・
でも、イタアキの相手を出来るのはしかいねェ。
少しでもの力になりたいでさァ。
だけど俺にはいつもなにもできないんでィ・・・
俺はつくづく無力なんでさァ・・・
「わかったよ。」
長い沈黙の後、土方が言った。
「の言ったことが間違ったことはねえからな・・・
信じてやるよ。
よし、じゃあ全員に明日の準備をしながら、
いつ襲撃があってもいいように警戒しとけって言っとけ、総悟。」
「はあ?俺ですかィ?
まったく。いつから俺に命令できるほど偉くなったんですかィ。」
『ほんとだよ。自分で思ってるほど偉くねーよ。
自分で行きゃーいいのに。』
そう言ったの顔は、さきほどの思いつめた顔とは全く違い、
いつものの顔だった。
「まーまー、そう言わずに。総悟、行ってやれ。」
近藤が笑って言うと、総悟は
「へーい。」と言って、食堂へ向かった。
『あと、近藤さん。』
総悟が部屋を出て行ってすぐ、が近藤に笑顔で言った。
『今日の私の仕事、他の人に回してください。』
「なぜだ?」
『私は近藤さんに言ったんっスけど?』
口を挟んできた土方をがにらんで言った。
「なにか理由があるのか?」
今度は近藤が言った。
『はい。今日はやることがたくさんあるので。』
「よーし、わかった。
トシ、の仕事は適当に分けて回しといてくれ。」
「・・・わかった。
まったく近藤さんはに甘いぜ。
つか、わざわざ仕事を分けなくても、
いつもは自分の仕事をやらなくて結局他の人がやらせるんだから、
いつもと一緒じゃねーか。」
『土方さん・・・なんか言いました?』
「///・・・別に。」
土方はの満面の笑みに顔をそむけてそう言った。
その様子を近藤は微笑んで見守っていた。
+++++++++++++++++++++++++
いよいよ・・・
1人の男が、ある建物から双眼鏡で真選組屯所を見ていた。
あと1分・・・
あと1分で辰星が突入する。
30秒・・・
10秒・・・
7
6
5
4
3
2
1
・・・
―――――0