「で、どうして岡中が本瀧寺じゃなくって屯所にくるってわかったんだ?」


岡中たちは隊士たちによって取調べをうけている。



そして、この部屋には近藤、土方、総悟、泰輝、がいた。





『土方さんには前にいいましたけど、

 私は始めに岡中の情報が入ったときから怪しいと思ってたんスよ。

 できるだけ近藤さんにもわかるように、わかりやすく説明するんで聞いててくださいね。



 まず、山崎が岡中の情報をつかんだときに少しおかしいと思ったんっスよ。

 岡中ってのは小さいっスけど頭脳派の組織っスよね。


 その組織が情報を漏らすというミスをおかすわけないと思ったんです。



 次にこの前、床下に潜りこんでて捕まったスパイです。

 一見、岡中とはなんの関係もないように思えますが、

 実はあのスパイは岡中の手下だったんです。


 まー、それは確信がなかったことだったんですけど、

 今夜の事件が予想通り起こったんで今、確信を持ちました。』



「でも、そのスパイはすぐに見つかって捕まっただろう?」

近藤がいった。





『はい。でも、それでおかしいと思ったんです。

 こんなに下手なスパイはいるだろうか、って。


 足音もろくに消せない、敵に見つかってのこのこ出てくる・・・

 普通は敵に見つかったら自爆くらいしますから。


 それで下手なスパイかと思ったら驚くほど口が堅い・・・

 矛盾してますよね。


 で、そのスパイは捕まったわけですけど、

 実は自分の役割を果たしていたんっスよ。』



「どういう意味でィ?」

不思議そうに総悟がきいた。





『そのスパイは見つかって捕まることが役割だったんスよ。


 見つかれば自分に目がいくことは当然。

 真選組の目を自分にひきつけることがそのスパイの仕事だったんです。


 そして、そのスパイが目をひきつけている間にもう1人のスパイが

 天井に上がって盗聴器をしかけた。』



「山崎に天井を調べさせたらあったんだ。

 食堂と局長室と会議室の天井に盗聴器がな。」

土方がいう。





『総悟、スパイが入った日に天井で物音がしたの覚えてる?』

「あれ、猫じゃなかったのかィ?」



『スパイだよ。

 猫だったら歩くたびに音がするでしょ?

 でも音は1回しかしなかった。

 足音を1回だけさせる猫なんていないだろーし。』


「そう言われればそうだな。」

総悟が納得顔になる。





『んで、私が天井に盗聴器があると確信したのは

 スパイ侵入の次の日の朝に、隊士たちの会話を聞いて、なんスよ。


 食堂には1席だけ朝、天井の穴から朝日をあびてまぶしい席があるんです。

 でもその次の日、その席はまぶしくなかったんです。


 隊士たちは天気がくもりなんだろうって思って気にしてなかったみたいですけど、

 その日は朝から快晴で雲ひとつない空だったんです。


 多分、スパイがよく聞こえるように

 盗聴器を天井の穴にかぶせるようにつけたんでしょうね。


 だから、穴がふさがって朝日がさえぎられてまぶしくなかったんです。』





「なるほど。

 そういえば、そんな話をしていたような気がしないでもないですね。」

泰輝が考えながらいった。








「あと、食堂と局長室と会議室の場所をどうやって知ったかっていうと、

 前に万引きで捕まって逃げ出した人、いましたよね?


 多分あの人がその3つの部屋の位置を教えたんだと思います。


 その万引き犯とスパイ、岡中組織の人全員に腕に同じ刺青があるんです。

 だから仲間だと確信したんスよ。



 しつように自分を取り調べた隊士にその3つの部屋の位置を聞いてたらしいっスから。

 その3部屋に盗聴器をしかけとけば全ての情報が入りますからね。



 そして盗聴器で岡中は、事前に流していた19日に動くという偽の情報を

 真選組がつかんでいるか、動くのかということを確かめたんです。



 だから、真選組が本瀧寺と星霜寺に行ったと思ってのこのこ屯所にやってきたんスよ。』





「前にその説明をきいたときに思ったが、

 なぜ19日に動くのがガセネタだとわかったんだ?」


土方がきいた。







『岡中らしくないな、と思ったんスよ。

 たしかにその情報がなかったら本瀧寺には真選組はあまりいなかったと思います。


 でも、天人もあまりいないと思うんスよね。ほとんど星霜寺の祭の方へいきますから。


 岡中は派手に行動を起こしますけど

 今回、これを実行したら地味だな、と思っておかしいな〜って思ったんです。』





「なるほどな。」


土方が納得顔になる。










『あと、退が盗聴器があるってきいてからも、知らないふりをしてきたのは

 19日にまとめて岡中を逮捕したかったからなんスよ。』


「俺たちには、もうちょっと前に教えてくれたってよかったんじゃないですか?」

泰輝がいった。





『敵をあざむくにはまず味方からっていうじゃんv

 だからだよ。』


が笑顔でいったので、泰輝は苦笑いをするしかなかった。










『それから、その組織は捕まっているスパイが入れられている部屋から

 1番近いドアから突入してくるってわかってたんで、

 そこにドアを開けたら爆発する煙玉と花火を仕かけたんです。』



「この前、山崎さんが花火を買ってたのはこのためだったんですね。」


泰輝が納得顔でいった。








『あと、多分この作戦を考えた人は今捕まった人の中にはいないでしょうね。

 罠だってわかったときに、いきなり突撃したのは

 あまり利口な行動だとは思いませんからね。


 それに、この作戦を考えたくらいの賢い人だ。


 岡中からその人の情報をききだそうとしても、

 彼らに名乗ったのは偽名でしょうからね。

 取調べしても無駄だと思います。



 それから、人数も少なくて剣の腕もそんなによくないこの組織が

 今まで生き残っていたのは、その頭脳犯のおかげだと思いますよ。


 取調べのおどおどした様子を見てて、今まで捕まらなかったのが不思議でしたもん。』




















「今回はのIQ勝ちでしたねィ。」

と近藤がでて行って、この部屋には泰輝、総悟、土方の3人がいた。





「なんてったってはIQ200越えてるからな。

 俺らとはレベルが違う。」


土方が刀を片付けながらいった。





「IQ200越え、ですか。」

泰輝が驚いていった。










は本当の天才でさァ。

 今回の件も、がいなかったらまんまと岡中にやられてただろうからねィ。


 取調べでは岡中たちは、俺らがいない間に、

 屯所にいる2人の隊士を斬って、前に捕まえられた仲間のスパイを助け出し、

 俺たちが疲れて帰ってきたところを不意打ちで斬りつける予定だったらしいぜィ。」



総悟がアイマスクをだして、寝ころびながらいった。










「じゃ、俺はこのへんで失礼します。」


そういって泰輝も部屋をでていき、部屋は総悟と土方の2人きりになった。




















「まだ疑ってるんですかィ?泰輝のこと。」



総悟がアイマスクをつけ、寝ころんだままいった。





「まだ完璧には信用していない。」


土方が総悟のほうを見ずに答えた。





「スパイがいたって最初に気づいたのは泰輝だって

 山崎がいってたじゃないですかィ。


 それでも信用できないっていうんですかィ?」





「俺たちに信用させといて、後で裏切る気かもしれない。」


「そうですかィ。」



たんたんという土方に、総悟があきれたようにいった。










「まったく。男の嫉妬は醜いですぜィ。」



「なにかいったか?総悟。」





「なんでもないでさァ。」



そういって総悟は寝返りをうった。