「で、あのスパイは誰に雇われてるか吐いたのか?」



近藤が土方にきいた。










ここは局長室。


この部屋には近藤、土方、総悟、の4人がいた。










「いや。なにをしても吐こうとしない。

 今も取り調べ中だが、多分ここまでして何も言わねぇんだ。

 死んでも言わねぇだろ。」

『そうっスか・・・』


土方の言葉に、が考えこむ。










「そのスパイのことはとりあえず置いといて、岡中のことはどうするんですかィ?

 あと3日後ですぜィ。」


「岡中が動く本瀧寺に総動員したいのはやまやまだが、

 将軍さまが同じ時間に星霜寺においでになる。

 将軍さまの護衛をしないわけにはいかないだろう。」

『わかってても総動員で岡中をとめることは出来ないんっスね。』

「あぁ。」



「え?なんで?」





全然わかっていない様子の近藤に3人は白い目をむける。






『近藤さんは全てが決まったあと、

 わかりやすく土方さんに教えてもらってください。』

がため息をつきながらいった。





「話は戻るが、本瀧寺と星霜寺に隊士を半分ずつ配置するのが妥当だろうな。」

「その日、屯所で留守番係のやつはどうするんでィ?」

「最低限少なくする。2人ほど残してあとはどちらかの寺にいかせる。」



『ま、それが1番いい策だと思いますよ。』

「でしょうねィ。」

「で、どういう策なんだ?」



場違いな近藤の発言に、3人は再び白い目をむけた。















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『おっはよ〜うv』

が元気に食堂に入ってくる。








今日は17日、つまり4人が作戦会議をした次の日。





「あれ、さん、今日はずいぶん早いですね。」



1人の隊士が声をかける。


まだ朝が早いので、隊士は数名しかいなかった。



『まーね。

 早起きは3文の得っていうから早起きしてみたんだー。』


そういっては食膳の前に座り、なにやら上を向いて考えごとを始めた。










「あ〜、お前その席たしか天井に穴があいててまぶしい席だろ。」

「あれ?そういえばそうだなぁ。でもまぶしくないぞ。」

「空がくもってるだけだろ。ったく、ラッキーなやつ。
 俺が前にその席にすわったときはまぶしくて目があけられなかったぜ。」



「14日に捕まったスパイ、どこに雇われてるか吐いたのか?」

「いや、かなり口がかたいスパイらしい。」

「なんかいろいろやってるみたいだけど、
 どれをやってもいっこうに口を開かないみたいだぜ。」

「へぇ〜、じゃあなかなかいいスパイなんだ。」

「スパイのことを褒めてどうすんだ。」










「おはようございます。」

泰輝がいつもどおりにぎやかな食堂に入り、

朝食を食べている山崎の姿を見つけてとなりに座った。



「おはよう、泰輝くん。」

山崎もそれに気づきあいさつをする。





「あれ?今日はがもういるじゃないですか。」

「うん。僕よりもはやく来てたんだ。

 ま、僕が来たときはご飯を食べずに考えごとをしてたみたいだけどね。

 でも、ついさっきそれが終わったみたいで納得した顔でご飯を食べ始めたよ。」



「へぇ〜、も考えごととかあるんですね。」

「失礼だよ、泰輝くん。」

山崎は笑ってそういった。










2人が食事をすすめていると、次々と他の隊士たちがやってきた。



そして近藤と土方も部屋に入ってくる。





「おはよう、みんな。今日もいい天気だな。」

近藤がいつもの笑顔であいさつをした。



「おっ、今日はもうが来てんのか。珍しいな。

 雨でも降るんじゃねぇのか?」


土方がを見ていった。





『失礼っスね。毎日私は6時起きっスよ。』

「嘘つけぇぇえ!」





「朝っぱらからうるさいですぜィ、土方さん。」

ふすまが開いて部屋に総悟が入ってきた。





「今日は総悟も早ぇのか。珍しい。

 こりゃ雨どころじゃなく、槍でも降ってくるんじゃねぇのか。」

「失礼ですねィ。

 毎日俺は6時起きでさァ。」

「嘘つけぇぇえ!

 てかやっぱお前ら打ち合わせしてるだろ!」





「いただきます。」『ごちそうさまでした。』


「またお前らはシカトかァァア!

 まぁいい。全員そろってるな。

 岡中のことだ、ちゃんと聞いてろ。」


その土方のひとことで食堂は静かになる。





「19日のことだが岡中が動くという本瀧寺と、

 将軍さまがおいでになる星霜寺に半分ずつ配置する。

 1・3・5番隊が本瀧寺に、2・4・6番隊が星霜寺だ。

 細かいことはこの後に会議室で隊長のみ出席の会議をする。

 以上だ。」



そういって土方は朝食を食べ始めた。

すると、隊士たちも朝食の続きをはじめた。










『どーすっかなァ・・・』

そんな中、はひとり困った顔でつぶやいた。

だが、そのつぶやきは誰の耳に届くこともなかった。