目が覚めると知らない場所にいた。





「ここは・・・?」



まだ覚醒していない頭を必死に働かせながら、上体を起こす。





するとだんだん昨日のことを思い出してきた。










「・・・そういえば俺、真選組になったんだっけ。」





昨日の夜、知らない間に寝ていた俺をと総悟が

『ご飯だよ〜。』といって起こしに来た。



そして、その食堂というか、だだっぴろい部屋で近藤さんが真選組全員の前で俺を紹介してくれたっけ。








『朝食は一応、7時になってるから。』というの言葉を思いだし、

「・・・一応ってなんだ?」とひとりでつぶやく。








そして、きのう総悟にもらった時計を見て、服を着替えはじめた。



着替え終わるころには、他の隊士たちも起きて廊下も少しさわがしくなっていた。





「腹減ったし、俺もいくか。」


そうつぶやいて、泰輝は部屋をでていった。










すると、2mほど前に見覚えのある後姿があった。



「山崎さん!」


自分の名前を呼ばれ、山崎はふりかえる。





「あぁ、泰輝くん。おはよう。」

「おはようございます。」








山崎とは、きのうの夕食で席がとなりになり、親しくなっていた。



「寝起きは悪いってきのう言ってたけど、全然大丈夫そうだね。」

「まぁ、今日はマシなほうです。」



「初日だから、緊張して熟睡できなかったのかもね。

 ま、どっちにしても、あの2人に寝起きの悪さは勝てないだろうけどね。」



「あの2人、ですか?」


「そう。

 ま、朝食食べてればわかるよ。」



2人が食堂につくと、ほとんどの人はもう朝食を食べはじめていた。










「うわっ、またこの席座っちまったよ。」

「どうした?そこ、嫌なのか?」

「あそこの天井の木が少しかけてて、

 ちょうど今の時間にここの席に太陽の光が当たってまぶしいんだよ。」

「なるほどな〜。よし、今度から座らないようにしよう。」


「きのうのドラマの再放送、見たか?」

「いや、俺は録画したけどまだ見てないぜ。」

「見た見た。内容はなー・・・」

「あーっ!バカ、言うなよ!」





部屋は隊士たちの声で少しにぎやかだった。


そして、開いている食膳に2人は並んで座って食べ始める。








「そういえば、泰輝くんって少食だよね。」

「そうですかね?

 きのうは、あまり動いてないのでお腹が空いてないんです。」





2人がそんな話をしていると、土方と近藤が部屋に入ってきた。


「みんな、おはよう!よーし、全員そろってるな!」





近藤がそういったので、泰輝は部屋を見まわしてみた。



―――――食膳は2つあいていた。








「今日は、少し報告がある。」



食膳の前に座って言ったその土方の言葉で、にぎやかだった食堂が静まりかえる。


そして、2人いないと知っているにもかかわらず、土方は話をはじめた。



「攘夷について新しい情報が入った。

 19日に岡中が動くらしい。

 当然、真選組は総動員でこれに対処するつもりだ。

 まぁ、細かい作戦はまだ決めていないが、お前ら準備しとけ。」



そういい終わると、土方は自分の食膳にマヨネーズをたっぷりすぎるほど、かけはじめる。








「昨日も驚きましたけど・・・朝食もなんですね。」

「朝食だとか、そんなのは関係ないよ。

 食べ物はすべてあのざまだよ。」


泰輝はグロすぎてマヨネーズまみれの朝食から目が離せないでいた。

そんな彼のつぶやきに、山崎がため息をつきながら答えた。








そして、みんながあと少しで食べ終わるというときに、

まだあいている2つの食膳を見ながら泰輝がいった。





「それより、と総悟がまだ来てないみたいですけど・・・?」

「あぁ、あの2人?いつものことだよ。

 もうすぐ来るんじゃな『おっはよーございまーす!』・・・ほら、きた。」



元気に部屋のふすまが開き、が入ってきた。





『今日もいい天気っスねv』

「お前はなぁ、毎朝毎朝遅ぇんだよ!」



『そんなー、私のことばっか気にしてないで

 食べ物をもっと大切にしたほうがいいと思いますよ。

 そんなマヨネーズだらけになっちゃって・・・


 ご飯やおかずさんたちがかわいそうっスよ。』



「別にかわいそうじゃね「おはよーございやーす。」





今度は部屋のふすまが静かにあいて総悟が入ってきた。


「お前も毎朝毎朝遅ぇん「そんな俺のことばっか気にしてないで

 食べ物をもっと大切にしたほうがいいと思いまさァ。

 そんなマヨネーズだらけになっちゃって・・・

 ご飯やおかずさんたちがかわいそうでさァ。」





「おい、と全く同じこといってんじゃねぇか!

 お前ら、絶対裏で打合せしてるだろ!」



「『いただきまーす。』」


「シカトォォオ!?」





「はっはっはっ、お前らは朝から元気だなぁ。」










「・・・いつも朝はこんな感じなんですか?」

「そうだよ。」


泰輝の質問に山崎が「当たり前。」といった顔で答える。





と総悟が土方さんをいじめて、それを近藤さんをはじめ真選組全員が見守る・・・


泰輝の頭にはそういうパターンがもう出来あがっていた。










「そういえば俺、今日はなにをすればいいんですかね?」

泰輝が山崎に聞いた。



「それなら、近藤さんに聞いてみるといいよ。

 まあいきなり難しいことは頼まれないと思うからさ。」


近藤を見ると、ちょうど食べ終わったみたいだったので

泰輝は近藤のところに歩いていった。





「近藤さん。」

「おぉ、泰輝か。

 どうだ、昨晩はしっかり寝れたか?」



「はい、ありがとうございます。

 ところで今日、俺はなにをすればいいんですかね?」


「そうだなぁ・・・

 よし、今日は山崎と一緒に書類整理でもしてくれ。

 山崎ー!今日は泰輝に書類整理のしかたを教えてやってくれー!」



「あ、はい。」


近藤にいわれ、山崎がお茶を手に持ったまま返事をする。








『じゃ、近藤さん!

 私はなにやればいいっスか〜?』

「俺もでさァ。」



近くにいたと総悟が近藤に話しかける。





「お前らは今日は書庫の整理だろ。」

その様子を見ていた土方が、横から口をだす。





『なにいってんスか。

 そんなホコリっぽい地味〜な作業は土方さんの仕事じゃないっスか。』

「そうでさァ。

 やっぱり、仕事はその内容にあう人がしなくちゃダメでさァ。」



「おい、お前ら・・・どういう意味だ?」















「じゃ、頑張ってくれ。」

横でいつも通りぎゃーぎゃー騒ぎだした3人を完璧にシカトして、近藤が泰輝にいった。



「はい。」


泰輝は苦笑いしながら返事をし、

山崎のほうへ向かい、一緒に部屋をでていった。




















「この部屋だよ。」



そういって山崎はひとつの部屋に入っていく。

泰輝もあとに続く。








その部屋には机が6台、3台づつ向かい合わせにならんでいた。

そして、その1台の机の上には山のように書類が積まれていた。


軽く1000枚はあるだろう。



「・・・こんなにあるんですか。」

「そう。ほんと泰輝くんがいてくれてよかったよ。」



「いつもこの量をひとりで?」

「まぁ、そうだね。

 たまーにさんが手伝ってくれるけど、ほとんどひとりかな。

 ま、極秘書類もあったりするからね。」



「極秘書類があるかもしれないのに、俺なんかがやっていいんですか?」

「この書類は天人が起こした犯罪の書類だから極秘のはないはずだよ。」





泰輝の目に1枚の書類が目に入る。










《奴隷事件。

 ―――天人が小さな村を襲い、その村人を奴隷として他の天人に売っていた・・・》






その書類を見て、泰輝の表情がけわしくなる。















「じゃ、早速やろうか。」

「はい。」



山崎の言葉で、はっと我に返って書類整理をはじめた。





「じゃ、まずは日付と場所別にわけようか。」



そういって山崎はどんどん説明していく。

泰輝も覚えようと一生懸命きいていた。