「あの、ちょっと聞いていいですか?」
2人きりになった部屋で、泰輝が総悟に聞く。
「なんでも聞けよ。
ただし敬語はなしでィ。」
「あー・・・うん。
土方さんはなんで俺のことをそんなに毛嫌いするのかわかんないんだけど・・・
俺、なんかしたっけ?」
「いや、泰輝はなにも悪くないぜィ。
ただの嫉妬でさァ。」
「嫉妬?」
「そうでさァ。
が泰輝にこだわってるのに土方がヤキモチを焼いてるだけでィ。」
「え?」
「自分の好きな女が、他の男をひいきしてるから素直になれないだけでさァ。
まったく。
男の嫉妬は醜いねィ。」
「へぇ、土方さんはさんのことが好きなんだ。」
「土方さんだけじゃないでさァ。」
「・・・総悟も?」
その泰輝の問いに、総悟は小声で「さァ?」とだけいって、
それ以上口を開こうとはしなかった。
『なんスか?土方さん。』
は副長室に入って、あぐらをかいて座っている土方にいった。
「岡中のこと、知ってんだろ?」
『あぁ、そのことっスか。』
も土方の前に座る。
『今回の件は土方さんにまかせますよ。』
その言葉に土方の表情が変わる。
「岡中っていえば、小さいながらかなりの頭脳派組織だろ。
ここは俺よりお前が考えるべきじゃねぇのか?」
『そうっスよねぇ・・・』
「そうっスよねぇ・・・ってお前なぁ。
なんだ?気になってることでもあんのか?」
土方がなにか納得いってない顔をしているにいった。
『今まで岡中が動くって情報、入ったことありましたっけ?』
「いや、初めてだと思うが。」
『あいつらは、たしかに頭がいい。
そんなやつらが、情報がもれるようなミスしますかね?』
「・・・なにがいいたいんだ?」
がなかなかはっきりいわないので、土方がしびれをきらせた。
『よくわからないんスけど・・・
その組織になにかあったのかもしれません。』
「・・・なにかってなんだ?」
『例えばですけど、今まで計画を考えていた人が組織からいなくなった、とか。』
その言葉に土方は少し考える。
『もちろん、ただのミスかもしれないんスけどね。
罠っていう可能性も考えられます。』
「・・・多分ただのミスだろう。
動く日にちも場所も盲点をついていて頭のいい岡中らしいしな。
実際この情報が入らなかったらまんまとやられていただろう。」
しばらく考えこんでいた土方が、やっと口を開く。
『そーっスね。
たしかに19日に本瀧寺ってのは盲点ですからね。
その日、本瀧寺で《開国祭》があって天人が集まりますから。
しかも同じ日、同じ時間に星霜寺でお祭りがありますし、
星霜寺のほうに将軍さまも行くから真選組も本瀧寺にはあまりいませんからね。
でも、岡中のことはまかせましたよ。』
「あぁ。」
土方は静かにうなずいた。
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「じゃ、他になんか聞きたいことがあったら何でも言えよ。
俺の部屋はこの先のつきあたりでィ。」
という言葉を残して、総悟がこの俺の部屋をでていって何時間がたっただろう?
窓の外がもう暗くなっていて電気をつけなければ部屋の中が見えない。
ってことは6時くらいか?
この部屋に時計はないのか・・・
後で誰かに頼も。
いよいよ俺も真選組、か。
ちょっとヒヤヒヤするところもあったが、ここまでは順調だな。
土方副長は俺のこと認めてねぇとかいってたけど、
違う意味で認めたくねぇだけかもしんねーし。
しかし、""ってやつ・・・
俺の名前を初めて聞いたときに疑ってたな・・・
なぜ偽名だとわかったんだ?
だとしたら、なぜ偽名だとわかって俺を真選組に入れたんだ?
ま、にしろ土方さんにしろ、完全に信用されてねぇのは確かだな。
まだ気をぬいちゃダメってことか・・・
そんなことより岡中っていったな、攘夷志士。
アイツには関係ないのか・・・?
アイツには・・・