あー、疲れた疲れた疲れた・・・・・・





なんでこーもやっかいごとに巻き込まれるかなー。








あれ、そもそもなんで第二音楽室に・・・・・・















―――――・・・・・・あ、筆箱忘れた。





あーぁ、もう最悪・・・・・・
















080 左頬。















重い。



身体が重い。



精神的にも肉体的にも。








家ってこんなに遠かったっけー・・・?




















音楽室を出てまっすぐ家に帰る途中、重たい足を引きずりながらゆっくり歩く。





横断歩道を渡ろうとしたらちょうど青信号が点滅し始めて

いつもなら小走りで急いでわたるところだけど、あいにく今日はそんな気分じゃない。



横断歩道手前で立ち止まり、座り込みたくなる身体をなんとか自力で支える。













ほっぺ痛い。まじで痛い。

ほっぺ熱い。まじで熱い。


これ絶対腫れてる・・・・・・(泣)



ていうか、腕痛い。まじで痛い。


あー、ズキズキするー・・・・・・















・・・・・・ん、










痛む左腕にちらっと視線を向けると















―――――キラキラ控えめに輝く四葉のクローバー。










キヨに誕生日プレゼントとしてもらったブレスレット。





つけ始めて1週間も経ってないけど、それはもう長年そこにあって


そこにいるのが当たり前であるように左手に馴染んでいる。















キヨ―――――・・・・・・








さっきまで、ざわざわと騒がしかった心が、そのクローバーを見ると少し落ち着いて、気持ちがふっと楽になるのを感じた。


自然と小さく深呼吸をする。





あー、私、緊張してたんだ。


なーんか、このブレスレット見てるとほっとするし

そーいえば腕もさっきより痛くない気が・・・・・・










深呼吸した後は、自分が無意識に険しい表情をしていたことにも気づけるくらいすっきりとしていた。













―――――・・・・・・ありがとう、キヨ。




















隣で同じように信号待ちをしていた立海の生徒達が動く気配を感じて前を見ると

信号は青になり、みんな楽しそうに友達としゃべりながら私の横を追い越していく。





私はブレスレットをちらっと見て、ふっと笑い

さっきよりも少し軽くなった足取りで自宅への道を進んだ。













あーぁ、ダイキにでも癒してもーらおっと。



















+++++++++++++++++++++++++


















〜♪〜♪〜〜♪〜










マンションの直前の運動公園にさしかかったところで、ポケットに入っているケータイが鳴る。













んー、誰からだろ?








ディスプレイの表示を見ると《千石清純》の文字。

あ、噂をすればなんとやら、だね。



自然と口元がわずかに緩むのを感じながら、通話ボタンを押した。










『もしもし、キヨ?』


《あ、ちゃん?良かったー、電話出てくれてv》


『どうしたの?今日部活は?』


《ミーティングの予定だったんだけどさ、急に職員会議が入って先生来れなくなって今日は休みになったんだ〜v

 ところでちゃん今どこにいるの?マンション?》


『ううん、まだ。でも、もうすぐ家に・・・・・・あれ?』





運動公園に沿って歩き、マンションの入り口が見えてくると

入り口の扉の横の柱にもたれているのは、遠くからでも目立つ、白い学ランとオレンジの髪。








『キヨ・・・・・・?』





私がそうつぶやくと同時に、彼も私に気がついたみたいでこっちに大きく手を振ってきた。


電話を切って手を小さく振り返すと、彼がこっちに向かって走ってくるのが見える。








おー、すごい勢いで走ってくるねー。

てか、なんでキヨがこんなところに・・・?



私のほうに手を振りながら猛ダッシュしてくる彼は、なんか飼い主の帰りを待つ小型犬みたいで

思わずふっと笑ってしまい、自然と私の歩みも早くなる。





あー、でも身体中あちこち打って痛いから、やっぱゆっくり歩こ。←








顔がはっきり見えるくらいまで近くなって、

ふは、やっぱりすごい(だらしない)笑顔で走ってるー・・・・・・と思ったら


急に振っていた手が止まって、(だらしない)笑顔も一瞬こわばったのが見えた。





そして一転、険しい表情になって、さらにスピードをあげてこっちに近づいてくる。










・・・・・・?



なんか、キヨ・・・・・・怖いっすけど・・・?










ちゃんっ!!!」


『っ!?』





目の前に来たかと思うと、キヨは私の両肩に手を置いて顔をのぞきこむようにして視線を合わせた。

険しい表情で、私の顔をじっと見つめてくる。



肩に手をおいて顔をのぞきこまれているため、それなりに顔の距離が近く

そんでもって、そんなにじーっと見つめられると





・・・・・・さすがに照れる///←










『キ、ヨ・・・・・・?』



「・・・・・・ちゃん。」








左肩に乗せられていた手がゆっくりと













―――――・・・・・・左頬に触れた。















痛っ・・・





痛みに思わず身体がびくっと反応してしまい、それを見たキヨが悲しそうに眉を下げた。








「ごめん、触ったら痛かったよね。

 でも・・・・・・どうしたの?それ。」



腫れてる・・・と言いながら、心配そうな顔で再び優しく頬に触れる。





なんと言えばいいかわからず黙っていると、真剣な顔がぐっと近づいてきて自然と視線が絡まり合う。















瞳の奥をのぞきこまれている気がした。

視界いっぱいに広がる、いつものだらしない笑顔ではない、引き締まった表情。










―――――・・・・・・っ///








彼が触れている左頬は、なぜかさっきよりも熱が上がった気がした。















『だ、大丈夫だよ!なんでもないって〜。』





キヨのあまりにも真剣な顔に何も言えなかったが、はっと我に返って安心させようと笑顔を作る。








「大丈夫なわけないじゃないか。こんなに腫れてるし・・・

 あー、でもとりあえず冷やさなきゃ。家、帰る?」


『うん。ジュースとお菓子なら出すから上がっていって?』


「うんv」





私が上目遣いでにっこり笑うと、キヨはいつものだらしない顔に戻って、私の肩と頬から手を離し

今度は、腰に手をまわしてマンション入り口までエスコートをしてくれる。















ちらっとキヨのほうを見ると、心配そうな顔で私を見つめていたため、必然的に目が合う。





まーた、そんな顔しちゃって。

キヨには心配かけたくないのに・・・・・・








にこっ。





安心させようとキヨに向けて微笑むと、彼はいつものようなデレデレ顔になる。








うん、キヨはやっぱりこうでなくちゃ。←















「いやー、平日にちゃんに会えるなんて幸せだね〜v

 あ、そういえばさ、言いそびれてたんだけど。

 ブレスレット、してくれてるんだねv」


『うん、もちろんだよ〜vもらってからお風呂はいる時以外ずっとつけてるよ!』


「えー、お風呂のときは外してるのー?」


『・・・・・・なんでそこでキヨが拗ねるの?』


「まぁ、寝るときは一緒ならいっか〜v」


『・・・・・・だから、なんで?』




















『・・・・・・・・・隠しカメラとかついてないよね、これ。』←
















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優しいキヨが好き。