バタンッ
突然開いた扉に無意識に目を向けると、そこに立っていたのは――――――・・・・・・
078 皇帝・・・ペンギン。
あ、先生。
って、違う違う。
確かに見た目はそーだけど、あの老け顔+帽子は、なーんだおなじみ真田くんじゃん。
あ、確か真田くんって、風紀委員だよね。いいところに来てくれた!
それがさー、この先輩2人が喧嘩しちゃってさー。いや、喧嘩ってわけじゃないか。
安瀬先輩が一方的に薮井先輩をいじめてるって感じ、かなー。
なーんか、私も巻き込まれちゃってさー。まいっちゃったよー、あははー・・・・・・
・・・・・・―――なーんて、おちゃらけて言える空気ではなくて。
お得意の軽口は、生唾と一緒にごくりと飲み込んだ。
彼はすごい剣幕で教室内を見回して、その視線は小動物なんかは見られただけで硬直しちゃうんじゃないかってくらい鋭くて
誰にも有無を言わせないオーラを放っている。
彼の視線は先輩たち、つづいて私に向けられ、いっそう鋭くなった気がした。
そして、彼の足はゆっくりと、だがどこか威厳を伴いながら動き出し
まっすぐ私のほうに――――――・・・・・・え?
バチーーーーーンッ
突然、左頬に鋭い痛みが走った。
その突然の大きな衝撃にまかせて、私の身体は軽く飛んだんじゃないかってくらい激しく冷たいタイルの床に倒れこんだ。
視界は白くもやがかかったみたいに、はっきりしてなくて、
・・・・・・・・・あー、ほんとに星って目の前で回るんだなー。
そして、左頬と同時に、左腕にも激しい痛みを感じて、思わず反対の手で握り締める。
―――――さっき、倒れこんでとっさに手を突いたときに、思いっきり体重かかっちゃったか・・・
あー、もう最悪。
うつむいていた顔を上げると、真田くんが私の頬に衝撃を与えた右手で帽子をかぶりなおし、私を見下ろした。
・・・・・・なんすか、その敵意むき出しの目は。
怖ぇーっすよ!
ていうか、なんで私が真田くんにビンタされたわけ!?
ったく。よく状況見てよ!どう見てもー・・・
薮井先輩→髪は乱れて、床に倒れこんでいる。
安瀬先輩→机にもたれかかって、しりもちをついている。
わ・た・し→いつもどおり元気に立ってたv
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・ちょっと待てーい。
誰がどう見ても、どう見ても・・・・・・どう見ても・・・・・・・・・
私が悪者やないかーい!←
・・・・・・あー、やべ。頭くらくらする。目がかすむ。年かな?(たぶん違うけど。)
ビンタされたのは頬だけのはずなのに、全身に力が入らず、立ち上がることができない。
「さ、真田くん、待って!」
シーンと静まり返った教室に、薮井先輩の声が響く。
冷たく鋭い目で私を見下ろす彼に向けて、意を決して発した言葉だったが
驚き・動揺と彼の威圧感に対する恐怖からか、声が少し震えていた。
「その子はなにも・・・・・・」
「薮井先輩。」
薮井先輩の震えた声を、真田くんが彼女の名前を呼ぶことで打ち消した。
彼は今まで私に向けられていた視線を、今度は薮井先輩に向ける。
先輩はその冷たい視線を静かに受け止め、彼の言葉の続きを待った。
「先輩には短い間でしたが身の回りの世話をしていただいてありがたく思っています。
ですが、俺たちは先輩が今までに安瀬先輩にしてきたことは知っています。
このままでは部員たちがテニスに集中できません。
テニス部を辞めてください。」
「え・・・・・・?」
彼のその言葉には薮井先輩だけでなく、私も、それを望んでいた安瀬先輩でさえも驚きで目を丸くしていた。
そんな私たちには対照的に、真田くんは表情を一切変えず、なおも冷たく言い放つ。
「テニス部に、もう関わらないでください。」
「・・・・・・っ。」
隣でいまだに床に座り込んでいる薮井先輩に視線を向けると、表情は乱れた髪で隠れてよく見えなかったが
その細くて青あざだらけの身体は、かすかに震えているのがわかった。
その震えは、悲しさ故か、やるせなさ故か――――――・・・・・・
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あー、ほんとに話が進まない・・・