『ねぇねぇ、金太郎くんが変な男の人に話しかけられてるよ?』
蔵ノ介くんと謙也くんと話している途中、ふとクレープ屋の前の金太郎くんを見ると
大人の男の人に話しかけられていた。
その人は花柄のチューリップハットに赤い髪でタバコをくわえて・・・いかにも怪しい人。
金太郎くん食べ物くれるっていったらホイホイついていきそうだし、大丈夫かな?
068 もっと世間は狭い。
蔵「え?・・・あぁ、オサムちゃんやん。」
謙「あ、ほんまや。」
私の言葉に反応した2人は金太郎くんのほうに視線を向け、焦る私とは対照的に落ち着いた声で言った。
『オサムちゃん?』
蔵「あの人顧問の先生やねん。」
『え、あの人が?』
謙「まぁパッと見胡散臭いもんなぁ。」
『うんうん。』
蔵「はは、さんハッキリ言いすぎやで。」
『あ、やべ。口がすべった。』
金太郎くんのことを何気なく見つめていると、彼は満面の笑みで私のことを指差しながら
"オサムちゃん"になにか言ってるみたいだった。
たぶん私のことを紹介してくれてるんだろう。
"オサムちゃん"が私のほうを見てにっこり笑ったので、慌てて軽く会釈をする。
蔵「財前たちはまだ来てないんか?」
『"ざいぜん"?』
蔵「あぁ、財前は今の部長やねん。」
謙「オサムちゃんがおっちゅーことは来とるはずなんやけど・・・あ、おったおった。ざいぜーん!」
謙也くんの視線を追っていくと派手な黄色いジャージを着た集団が見えた。
おそらく彼らが"四天宝寺中テニス部"なのだろう。
謙也くんの呼びかけに反応して、そのうちの1人がこちらに向かってくる。
「大きい声出さんとってください。
恥ずかしくてしゃーないですわ。」
私たちの目の前まで来てだるそうにしゃべったのは、黒い短髪の男の子。
これまた整ったきれいな顔立ちをしていて、蔵ノ介くんや謙也くんとは違った雰囲気のイケメンだった。
でも、私の目が最もひかれたのは彼の右耳に2つ、左耳に3つぶら下がっている、合計5つのリングピアス。
しかも赤・黄・緑・青・黒と全部色が違っていて・・・
あー、あれだ。オリンピックのマークみたい。
・・・・・・あれ?
オリンピックのピアス・・・
五輪のピアス・・・
・・・・・・五輪ピアス?
もしかして彼がブログの"五輪ピアス"くん?
・・・・・・いやいやいや、それはないって。
この広い日本の中で五輪ピアスしてる人なんて山ほどいるよ・・・ね?
五輪ピアスくんのブログも関西弁だけど・・・
いや、大阪のほうではこれが流行ってるんだ・・・よね?
私が"財前"くんのことをぼーっと見つめていると、その視線に気づいた彼と目があった。
だけどそれはほんの一瞬のことで、彼はすぐに視線を謙也くんたちに戻す。
「んで、先輩らナンパっすか?謙也さんあいかわらず手早いっすわ。」
「ナンパちゃうわ!しかもなんで俺限定やねん!」
「あ、そうっすよね。ヘタレなんで声かけれないっすよね。」
「お、おま、ヘタレ言うなや!」
「白石先輩、逆ナンっすか?」
「おい、無視すんなや!てかなんでそこは白石やねん!」
・・・なんだ、この漫才は。
会ってすぐに始まっちゃうところ、さすが大阪やねん。←
「財前、ちゃうんや。さんは金ちゃんを《〜♪〜〜〜♪♪〜》・・・ん?」
蔵ノ介くんが話している途中で突然、私のポケットにあるケータイが鳴った。
『あ、ごめん。』
取り出して見てみるとキヨからの電話だった。
彼らにことわって電話にでると、心配だったから休み時間を見計らって電話してくれたらしい。
無事に用事が済んだと伝えると、もう次の授業始まるというのですぐに切った。
『ごめんごめん。』
謙「あ、もうええんか?」
蔵「もしかして何か用事があったんか?東京まで来てもろて・・・」
『ううん、全然大丈夫だよ。』
財「・・・"さん"、でしたっけ?」
『え、うん。』
電話を終えると、"財前"くんが私の手元をじっと見つめていた
かと思うと、視線を私の顔に上げて、まじまじと見て話しかけてくる。
さっきまでは私のことなんて全く興味ない感じだったのに、どうしたんだろ?
財「ライチュウ、好きなんすか?」
『ライチュウさま?あぁ、これ?うん、超すき〜v』
手元をじっと見つめてたのは、このケータイの裏に貼ってるライチュウさまのシールを見てたわけね。
あれ、もしかして"財前"くんもポケモン仲間?
『"財前"くんもポケモン好きなの?』
「いや、全く興味ないっすけど。ただ知り合いにライチュウが大好きな人がおって・・・
その人もライチュウ"さま"って呼ぶんすよ。」
『へぇー、その人とは仲良くなれそうだv』
「その人は三毛猫も飼ってて・・・」
『え、うそ。私も飼ってる。』
「神奈川に住んでて・・・」
『私もだ・・・』
「ぜんざいが売り切れで買えなくて・・・」
『そうそう、あの時は悔しかったー・・・ん?』
「学校の劇でドラえもん役やって・・・」
『ドラえもんじゃないわ!王女だよ、ヒロイン!
って、それ完全に私じゃん!』
え、どういうこと?と"財前"くんに目で問いかけても、彼は一人で納得していて反応はない。
蔵ノ介くんと謙也くんを見ても、私以上にわけがわからないをいった表情をしていた。
なんで"財前"くんが私のこと知ってるんだろ・・・
てか、その人のこと《知り合い》って言ってたよね?てことは私も"財前"くんを知ってるってこと?
と言うことはー・・・・・・考えられることは一つ。
そう、真実はいつもひとつ!←
『・・・"五輪ピアス"くん?』
「ま、そーゆーことっすわ。」
『まじ!?』
驚きのあまり、思わず大きな声を出してしまった。
2人で勝手に納得する私と"財前"くんをよそに
蔵ノ介くんと謙也くんは、ますますわけがわからないといった顔で状況を見守っていた。
出会ったときにまさかとは思ったけど・・・・・・ほんとに"財前"くんが"五輪ピアス"くんだったなんて。
毎日ブログで絡んでた"五輪ピアス"くんと今直接話してると思うと、ちょっと不思議な感じ・・・
出会うことなんてないと思ってたから、ほんとにびっくりだよねー。
しかも、こんなイケメンだったなんて・・・
勝手に中の下くらいのザ・普通メンだと思ってたよ。
ていうか・・・
まじで世間せますぎ。
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次は蔵ノ介sideで書こうかなー。