今日は俺たちの学校―――――四天宝寺は、中学校も高校も、ついでに言えば大学も創立記念日で休み。



そんでもって今日は部活も休みやから、財前たちの合宿に応援も兼ねてついて来た。





合同合宿の相手が去年全国で負けた青学やし、まぁ手塚くんたちは俺らと一緒で卒業しとるからおらんやろうけど


ま、新生青学も気になるやろ?





ってことで一緒に来たんやけど・・・・・・










案の定というか、デジャヴというか―――――気ぃついたら新幹線から金ちゃんの姿が消えとった。





とりあえず財前たちは今日泊まるホテルに荷物を置きにいって

俺と謙也は青春台駅で、どーやって金ちゃんを探そうか考えていた。










「金ちゃんホンマどこいったんや・・・」

「あ、あれ、金ちゃんやないか?」



ため息まじりに2人であたりを見回すと、謙也の視線が一点でとまった。





「えっ、どこや?」



謙也の指さす方を見ると確かに金ちゃんがおって、知らない女の子と楽しそうに走っとる。





・・・いや、ちゃうか。


よぅ見たら、金ちゃんは満面の笑みやけど女の子の方は困ったような顔しとるわ。





全く、あのゴンタクレは・・・―――――








「金ちゃん!」








俺が金ちゃんの名前を叫ぶと、呼ばれた本人ではなく





彼に手を引かれる彼女と目が合った。
















068.5 先輩の妹、後輩の知り合い。by白石















遠くから俺たちに気づいた金ちゃんの「しらいし〜!けんや〜!」という声が聞こえ

ものすごい勢いでこっちに走ってくる。



あーあー、女の子は大丈夫かいな・・・















「ところで金ちゃん、この人は誰なん?」



金ちゃんへのお説教もそこそこに、彼の隣でひざに手をついて肩で息をしている少女に目を向けた。





金ちゃんに無理やり引っぱられるかたちで俺たちの前まで来た彼女は

謙也の声に反応して、今までうつむいていた顔を上げる。













パッチリとした大きな目が印象的な可愛らしい女の子。

その誰が見ても間違いなく"可愛い"という顔立ちに加え

息が上がって少し赤くなっているところが、さらに男心をくすぐる。



さすが東京や。

こんな可愛え子が普通におるんやな・・・










や!道に迷っとったら、が神奈川からここまで連れて来てくれたんやで〜。」



嬉しそうに言う金ちゃんの言葉で、自分が彼女をじっと見つめていたことに気づき、はっと我に返る。





アカン、見とれてしもたわ・・・""さん、って言うんやな。








とりあえずさんにお礼を言って謙也のほうにふと視線を向けると、さんのことを見て固まっていた。


頬は赤く染まっていて、口は半開き。

まばたきするのを忘れてるんじゃないかっていうくらい、じーっと見つめている。








―――――こいつ、完全に見とれとるやん。




















彼女の名前は、さん。


なんと翼先輩の妹やった。





翼先輩には、俺が中学のときに逆ナンされてたのを助けてもらってから、なにかと可愛がってもらっとる。

言われるまで全く気ぃつかんかったけど、確かに言われて見るとどことなーく似とる気ぃするわ。



ま、確実に言えることは2人ともかなりの美形ってことやな。





よくよく話を聞くと、金ちゃんを神奈川からつれてきてくれたみたいで、食べ物までくれたらしい。

やっぱ顔だけじゃなく、性格もええとこはさすが翼先輩の妹やわ。








それからしばらくして財前が来て、―――――なんと、さんと知り合いみたいやった。





意外やなぁ、こいつが女の子と・・・てか人と、こんな楽しそうに話しとるの初めて見たわ・・・

さんもなんか素で話しとるみたいやし。

ほんま仲良さそうやな。




















神奈川に帰るというさんと別れて、青学へと続く道を歩く。

今から行ったら、ちょうど放課後の練習が始まるくらいだろう。



あー、金ちゃん「コシマエー!」言いながら走りまわっとるわ。

また迷子になっても知らんで・・・








謙「ところで財前、お前ちゃんと知り合いやったんか?」

財「まぁ、知り合いってほどやないっすけど。今日初めて会いましたし。」

蔵「そうなん?仲良さそうやったけどなぁ。」

謙「今日初めて会ったって・・・どうやった知り合ったんや?"五輪ピアスくん"ってなんや?」

財「なんすか、謙也さん、あの人のこと気になるんすか?」

謙「そ、そんなんちゃうわ!///ただ、ちょっと気になっただけっちゅー話や!」

蔵「なんや、やっぱ気になっとるんやないか。」

謙「なっ・・・///」

財「ふーん。」










―――――そういう財前も、けっこう気になっとるやろ?





その言葉が口から出かかったが「きもいっすわ。」といつものようにかわされるだろうから、飲み込んでおいた。




















さん、か。





確かにかわええし、優しい子やったし、










―――――俺自身、また会えたらええなと思っとることは絶対言えへんな。
















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6月編終了ですv
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