2泊3日の立海合宿も今日がついに最終日。





昨日の夜は部屋に戻ってから真菜子ののろけ話をずーっと聞いてたから

ほとんど寝れてなくて・・・・・・正直、今めっちゃ眠い。








しかもさんざん良い雰囲気になっときながらまだ付き合ってないらしいしさー。





ほんと早くくっついちゃえばいいのにv
















065 立海合宿最終日 大掃除。
















朝食を食べ終わって大掃除の時間となり


委員会に入っている人は、その委員で集まって決められた場所へ行き

残りの人は各自泊まった部屋の掃除をすることになっていた。








だから委員会とか入らないほうがいいんだよねー。


だって自分たちの部屋の掃除のほうがラクに決まってんじゃん。



保健委員が掃除担当になっているいくつかの部屋が、いつもの当番のペアに割り当てられ

私とばかひろは入浴場の近くの小さなロビーをだらだらと掃除していた。















『ばかひろー、真面目にやれよー。』


「はー?お前だってやってねーじゃねぇかー。」



ばかひろの間延びした返事はかすかに震えていた。





え?なんでかって?



それは彼がマッサージチェアに座ってブルブルしているからだよ!←





かくいう私はソファに座ってフットマッサージ機に足を入れ

旅の疲れを癒しながらテーブルを拭いていた。










『いや、私は手を動かしてるから。』



しばらくすると、ばかひろは満足したのかマッサージチェアから立ち上がった。





「お前に客だぞ。」

『え?』



ばかひろがあごをしゃくった先を見ると





―――――気まずそうにうつむいた石立くんが立っていた。










「さっきからチビに話しかけたそーにしてんだよ。

 つーことで、お邪魔な俺はちょっと向こうのほう掃除してくるわ。」


『あ、ちょっと・・・』



私の制止を聞かず、ばかひろは肩や首をまわしながら

少し離れた廊下の端の自販機のところへ行ってしまった。



それと入れ替わりで石立くんが私のもとへ近づいてくる。








「少しだけ・・・いいかな?」


『あ、うん・・・』


「ここならあっちからも俺たちが見えてるし

 安心して、っていうのは無理かもしれないけど・・・話を聞いてほしいんだ。」





正面に立った石立くんはちらっとばかひろのほうを見てから、私のほうに向き直った。

私は急いでフットマッサージから足を出して、靴を履いて立ち上がる。



彼と向かい合うと、昨日の記憶が嫌でも思い出され自然と身体が硬直してしまう。

それでもなんとか深呼吸をして心を落ち着かせ、まっすぐに彼を見つめた。





すると私と目が合った瞬間、彼は勢い良く頭を下げた。



「昨日は、ほんとにごめん。あんなこともう二度としないから・・・

 許してもらえるなんて思ってないけど、これだけは言っておきたくて・・・」



そう言った石立くんの声はかすかに震えていた。


彼は言い終わってもずっと顔を上げることなく、

握り締めたこぶしは力を入れすぎて白くなっている。





『うん、もういいよ。だから顔上げて?』



ちゃんと反省してるみたいだし・・・若気の至りってことにしといてあげよう。


そう思ってなるべく笑顔で言うと

彼は顔をパッと上げ、驚いた顔を私に向けた。





「ほんとに・・・いいの?

 許して、くれるの・・・?」


『うん。』



そう言って笑った私を見て、石立くんが泣きそうな顔になる。





「昨日の夜、仁王に言われて改めて自分のしたことの大きさに気がついて・・・

 もう絶対に許してもらえないと思ってた。」


『え?におーやさんが?』


「あぁ、夜中に俺のところまできて、すごい剣幕でもうあんなことすんなって言ってきたんだよ。」


『そうなんだ・・・』



夜中ってことは、肝試しのあとにそんなことしてくれたのかな?

特になにも言ってなかったのに・・・





「あ、でも仁王に言われたから謝りに来たわけじゃないよ?

 ほんとに申し訳ないと思ったから・・・」


『うん、わかってるって。』



私の言葉を聞いてから、石立くんは「じゃあ。」と言ってぎこちなく笑い、小走りで廊下を走っていく。


私がその背中をなんとなく見つめていると、彼が急に立ち止まって振り返った。





「でも・・・さんのこと、諦めてないから!

 これからは正々堂々アプローチするからね!」








大声で叫んだその言葉に、私は思わず目をぱちくりさせる。



少し遠くに見える彼は、どこか吹っ切れた顔をしていた。




















彼の姿が見えなくなった後、私は気が抜けてソファに倒れこんだ。








いや、諦めないって・・・・・・まじか。


どーなってんだよー・・・



まぁでももうあんなことはしないって言ってたし、大丈夫・・・・・・か?










「恥ずかしいやつ。」



石立くんと入れ替わりで帰ってきたばかひろが

私の向かいのソファに座った。





『盗み聞きかよー、趣味悪ー。』


「あんな大声で言ったら嫌でも聞こえるっつーの。」



ばかひろはソファに寝転んでケータイをいじり始める。





まぁ靴をちゃんと脱いでるから良いけどさー



・・・ていうか、こいつ1秒でも掃除した?










「つーか、あいつも物好きだなー。お前みたいなやつのどこが良いんだか・・・」


『私もそれは切実に思うけど、ばかひろに言われるとむかつく。』








せーのっ!



そう心の中でつぶやいて、机に置いてあった雑巾を狙いを定めて投げると

見事に仰向けになっているばかひろの顔にバサッと乗った。





「っ!?」


『よし、ビンゴv』


「て、てめぇ・・・」


『すみません、時間なんでお先でーすv』








ばかひろが起き上がる前に、すばやくソファから立ち上がって走り出す。










その途中、「待てよ!クソチビ!」という声が聞こえた気もするけど・・・



私は立ち止まることなく、ダッシュで自分の部屋に戻った。
















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立海合宿編終了です!お疲れさまでしたv