「〜、さっきはどうだったの?やっぱ告白だったの?」
『あー・・・・・・うん、まぁね。』
部屋に帰った私に、真菜子がにやにやしながら話しかける。
におーやさんにしばらくそばに居てもらってだいぶ落ち着いたけど
・・・やっぱりあのことはまだ思い出したくないな、うん。
063 立海合宿2日目 サプライズ。
じりじりと焼けるように暑かった昼間とはうってかわって
今では山の中らしい涼しい風が吹いている。
夜もすっかり更け、空には輝く満天の星。
その下でパチパチと燃える赤い炎。
『あー、やっぱ山だから星がきれいに見えるねー。』
「うんうん。家の近くだとこんなに見えないもんね。」
立海合宿もいよいよ終盤となり、この宿泊所で過ごす時間も残り少なくなっていた。
今夜のイベントはキャンプファイヤー。
みんなで歌ったり、踊ったり、たそがれたり
・・・端っこで、こっそりマシュマロを焼いたり。←
キャンプファイヤーが終わると、明日は午前中に大掃除をして帰るのみとなっていた。
この合宿はいろいろあったけど楽しくてあっという間だったなー。
割り箸につきさしたマシュマロをブン太くんと一緒にふぅふぅしながら食べていると
先生のキャンプファイヤー終了という声が聞こえてきた。
『えー、まだマシュマロいっぱいあるのに・・・』
「まぁ残ったらそのまま食っても良いだろぃ。」
「お前らまじでよく食うな。」
「丸井ー、太るよ。」
すぐ後ろのベンチに座っていたジャッカルと真菜子があきれた顔を私たちに向けた。
その言葉を聞いたブン太くんがふくれっつらで後ろを振り返る。
「なんで俺限定なんだよ。」
「はもうちょっと太ってもいいのよ。」
《これでキャンプファイヤーは終わります。で・す・が!
みなさん、これでこの合宿終わっちゃっていいんですか!?
なんか物足りなくないですか!?
ってことでこれから学級委員主催の"肝試し"をやりたいと思いまーす。》
突然、広場に拡声器を通した声が響いた。
"肝試し"・・・?
そんなの日程表に書いてあったっけ・・・?
あたりを見渡すと、私だけでなくブン太くんたちや周りの生徒たちも
みんなきょとんとした顔をしている。
《これから行う肝試しは、学級委員が企画・運営をしてるんで
正式なイベントじゃありません!てことで、参加も自由です!
でも正直、頑張って準備したのでひとりでも多くの人に参加してもらいたいです。
参加してもいいよって人はこのまま残っててください。
詳しいことはまた後で言いまーす。》
放送が終わったあと、真菜子に相談しようと彼女のほうを見ると
彼女は全く驚いてないみたいだった。
『真菜子はやるの?"肝試し"・・・』
「あー、うん。実は体育委員も準備とか手伝うことになってんのよ。
サプライズにしたいからって言われて黙ってたんだけどね。」
『へぇー、そうなんだ。』
「面白そうじゃん!ちゃんもやるだろ?」
『うん!みんながやるならやる!』
キャンプファイヤーが終わってしばらく経ったが
この場にはほとんどの生徒が残っていて、これから始まる"肝試し"を心待ちにしていた。
あのあと学級委員の代表の人によって伝えられた説明によると
くじで男女ペアをつくって、それぞれ山の中の肝試しコースをすすんで
途中の目的地でカードをひいて帰ってくるというもの。
んで、そのカードっていうのには何か"試練"とやらが書いてあるらしくて・・・
それを成し遂げて帰ってこなければいけないらしい。
男女ペアときいて一瞬嫌な記憶が頭をかすめたけど
ここまで来て引き返すわけにも行かないし・・・
新たな良い友達ができるかもしれない・・・と思うことにした。
まわってきたくじをひくと"C17"と書いてあった。
つまり、肝試しCコースの17番目ってことかな。
相手は誰だろー・・・?
「4コースの17番の人ー、誰ですかー?」
えっ、私なんですけど・・・!?
声のしたほうを見ると、少し遠くでオカタクがうろうろしながら叫んでいた。
「4コース17番の人ー、いたら教えてくださーい。」
なーんだ、私のペアはオカタクか。
良かったーvオカタクとなら楽しく肝試しできそう♪
・・・・・・いや、ちょっと待てよ。
「ー、ちゃんとくじひいた?」
『あ、おかえり〜。うん、さっきひいたよ。』
運営の仕事でこの場を離れていた真菜子が帰ってきた。
彼女の手にも白い紙が握られていて、くじは引き終わってるみたいだった。
真菜子、スタンツ終わってからオカタクと良い感じみたいだし
・・・しゃーなしだから、ここで一肌脱ぎますか。
『真菜子、ちょっとくじ貸して?』
「いいけど。なにすんの?」
『あ、"A21"!?私の今日のラッキーナンバーが"221"なんだよね〜。
くじ換えてくれない?』
「え?まぁ別にいいけど・・・」
真菜子が思いっきり不審そうな目を向けてきたけど
・・・気にしない、気にしない。
きっと何分後かには私に感謝することになるんだからね!
「ちゃーん!」
急に名前を呼ばれて振り返ると、
ブン太くんとジャッカル、そのちょっと後ろににおーやさんがいた。
「ちゃん、何番だった?」
『んーっと・・・2コースのー・・・あ、そうそう21番だ。』
『ブン太くんは?』と聞こうとしたら、
その前に彼は「よし、わかった。」と言ってどこかへ行ってしまった。
―――――まぁ、すぐそこで女の子に囲まれて身動き取れてなかったけど。
『一体、なにがわかったんだろ・・・
あ、ジャッカルは何番だった?』
「俺か?俺はDの11だったぜ。」
『ジャッカルでもないかー・・・』
におーやさんにも番号を聞こうとあたりを見回したけど
いつのまにか彼は私たちの近くにはいなくなっていた。
ま、どうせどこかで女の子に囲まれてるんだろうけどね。
幸村くんが"@29"っていうことがわかってから
そのくじが争奪戦になってるみたいだし・・・
でも好きな人と2人きりで暗い山道を歩くとか・・・フゥォ〜v
ってなるのもわかるよね。←
恋の始まり、急接近の予感だよねv
周りを見ると、男子も女子もみんなどこかそわそわしながらにぎやかに騒いでいて
肝試しが始まる前から大盛り上がりだった。
私は、真菜子とオカタクが一緒に楽しそうにしているのを遠くから確認してから
Aコースのスタート地点へ向かった。
それからしばらくして、学級委員の人から放送があり
ついにドッキドキの肝試し大会が始まった。
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肝試しのお相手は・・・?