ちゃんっ!」


『あ、ブン太くん。お疲れ〜。』








食堂で昼ご飯を食べたあと、全員が体育館に集められていよいよスタンツが始まった。





学年主任による厳正なくじ引きによって順番が決められ、

さっきトップバッターのB組のスタンツが終わったところ。



真菜子はついさっきまで隣で一緒に見てたんだけど

体育委員として司会運営の仕事があるらしくどこかへ行ってしまった。










今、ステージの上では2番目のクラスであるF組のスタンツが行われている。





その中に見知った生徒もいないので、ひとりでぼーっと眺めていたら

後ろからブン太くんに話しかけられた。





「一人で見てんのか?」


『うん。さっきまでは真菜子がいたんだけどね。

 委員会の仕事で行っちゃったんだ。』


「そっか。じゃあ俺も一緒に見ていい?」


『うん、もちろんv』
















060 立海合宿2日目 本番。
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『ていうか、さっきのB組のスタンツすごかったよ〜。

 ブン太くんダンスも上手いんだね。』


「まぁな。やっぱ俺って、天才的だろぃ?」



ブン太くんが満面のどや顔を私に向ける。





確かに彼がステージ上でポーズを決めるたびにキャーという女の子の歓声が上がっていた。



まぁダルそうに踊るにおーやさんにも熱い視線は送られてたみたいだけど


今回の主役はブン太くんだったかな。



完全にアイドル顔負けだったしねー・・・




















『あ、柳くんだ。』





3番目のクラスがステージの上に上がり、それをなんの気なしに眺めていると

知っている顔が見えたため、思わずつぶやいた。



外部生の私にとっては別のクラスの友達なんて少ないから

スタンツ中に見つけただけでなんとなく嬉しくなる。








「えっ、柳のこと知ってんの?」


『うん。なんか困ってるときにいつも助けてくれるんだよね〜。

 魔法のノートで。』


「あぁ、柳はいつもノート持ち歩いてっからなー。

 部活でもずっとなんか書き込んだりしてるしよ・・・」


『あれ、部活一緒なの?

 だったら中に何が書いてあるか知ってる?めっちゃ気になるんだけど・・・』


「いや、あの中は俺も見たことねぇからなー。

 てか誰も見たことねぇと思う。

 でもテニスデータはもちろん、全校生徒の個人情報も入ってるって噂だぜ?」


『ま、まじか・・・』





全校生徒ってことは高1〜3までの3学年あるよね?

んで、1学年に9クラスあって、1クラスは約40人だからー・・・


うん、計算できないけどすごい量だよね。



ていうかそもそも、そのデータはどうやって手に入れてるんだろ?








「ま、味方だと心強いんだけどな。敵には回したくねぇやつだよ。」


『あー、なんとなくわかるかも・・・

 目も開いてるかわかんないのに見えてるみたいだしね。』


「・・・そこはつっこんじゃだめだろぃ。」





やっぱりそうなんだ。←

柳くんってほんと不思議な人・・・



ノートの中身も気になるし、まぶたのうらの瞳も気になる。





いつかその謎も解いてみせるぜ!



じっちゃんの名にかけて!(うちのじいちゃんただの農家だけどね。←)




















「あ、真田じゃん。」


『ほんとだー。真田くん何やるんだろ?』





ブン太くんの視線を追って次にステージに上がったクラスを見ると、

センター近くに真田くんが立っていた。



そして、すぐに音楽がかかりG組のスタンツが始まる。








「『ぷっ、』」





私とブン太くんは同時に吹き出した。



ブン太くんはそのままお腹を抱えてアハハハと大声で笑っていて、

目にはうっすら涙までたまっている。



同様の笑い声が、体育館のあちらこちらで聞こえた。



私はほっぺたをつねって、必死に笑いをこらえながらも

口元は完全にゆるんでいた。








体育館にかかったのは、今流行の女の子アイドルグループのヒット曲。


真田くんはそれに合わせて激しく踊っていた。



それだけでも充分おもしろいのに

あの仏頂面でそんな可愛らしいダンスされたら・・・・・・ぷぷっ・・・もう我慢できない・・・





真田くんが手でピストルポーズをつくってハートを打ち抜いた瞬間

私ももうついに我慢できなくなって、アハハハと声を出して笑った。










「あー・・・笑いすぎて苦しいー・・・腹痛ぇー・・・」



ブン太くんの笑いが収まったのは、G組のスタンツが終わり、

次のクラスのスタンツが始まってしばらく経ってからだった。





「くっそー、あんなの反則だろ。面白すぎだって・・・」


『うんうん。ほんと面白かったねー。』





ちょっと怖いイメージあったけど

いつも何事にも一生懸命だから、きっと厳しめな顔になってるんだろうな〜。


ちょっとイメージ変わったかも・・・








「そういえばさ、前の服装検査のときに真田に捕まったんだろぃ?」


『そうだよー。あんときはいきなり怒鳴られてかなりびっくりしたもん。』


「あいつ誰にでもにも容赦ねぇからなー。部活とかもいっつも厳しいし・・・」


『え、もしかして真田くんもテニス部・・・?』


「あれ、知らなかったのかよ。真田は俺らの代の副部長だぜ。」


『へぇ〜。』



柳くんもさっきテニス部だって知ったし・・・

ほんとに私のテニス部との縁って・・・すごくない?


いや、むしろこの学校にはテニス部しかいないんじゃないかな・・・?←








『でも真田くんが副部長だと、部も引き締まる感じするね。』


「まぁなー。赤也なんかいっつも怒られてたし・・・」


『あはは、なんかわかるかも。』


「だろぃ?あいつバカだから、いっつも怒られてんだよ。」





『でも、真田くんみたいな厳しい先輩がいて

 ブン太くんみたいな面倒見のいい先輩がいるから

 赤也くんとかがのびのびできるんだろうなー。』



だって今部長やってるってことは赤也くんも上手いんだろうし。

立海みたいな超強豪校で上手い後輩なんて、先輩との関係が難しいと思うんだよね。



まぁ赤也くんはそんなの気にしないタイプだろうけどさー。










ステージで行われているスタンツをぼーっと見ながらつぶやくと、隣から視線を感じた。

ふとそちらを見るとブン太くんが目をまん丸にして私を見ていた。





『・・・ん?どうかした?』


「あ、いや・・・そんなこと言われたの初めてだからさ・・・」





ブン太くんは私と目が合うとあわてて目をそらして下をむいた。


髪のすきまからのぞく顔は少し赤いように見える。



あ、もしかして照れてる?





『でも、後輩から慕われるのってほんとすごいと思うよ。まじ天才v』


「だろぃ?///」





ブン太くんは恥ずかしそうに後ろ頭をかいてから


顔を私のほうにパッと向けてニシシと笑った。
















+++++++++++++++++++++++++















ふぅーーーーー。








ステージの裏で深呼吸をひとつ。










「緊張してるの?」



声のした方を見ると、金髪の美少年が優しい微笑みを浮かべていた。








『・・・一瞬誰かわかんなかったよ。似合ってるね、幸村くん。』


さんもその格好、とっても可愛いよ。」


『えへへ、ありがと。』





私たちC組の順番は、なんとなんと大トリの9番目。



そして今ステージでは8番目のクラスのスタンツが行われていて

私たちはカツラや衣装などを身につけステージ裏で待機していた。



幸村くんはサンジ役だから服装は制服なんだけど金髪のカツラをかぶっている。


私はというと・・・ビビ役だから水色のロングのカツラに白いロングスカートのドレス。



鏡で自分の姿を見たときはほんとに自分の目を疑った。





真菜子もジャッカルも私の姿を見てしばらく固まってたし。



カツラと服だけでこんなにも変わるんだねー・・・




















前のクラスのスタンツが終わったらしく、表のほうで拍手の音が聞こえた。



ステージから生徒たちが下りてくるのを見てみんなの顔が少し引き締まる。






「よしっ、みんないよいよだよ!

 今までやってきたことを全部出し切ろう!

 C組絶対優勝するぞー!」



「「「「「『おー!』」」」」」





クラス全員で円陣を組み、監督のかけ声で心を一つにして



私たちはステージの上へと向かった。




















うひゃ〜、めっちゃ見られてる・・・





ステージに上がると体育館中から私に向けられる目、目、目・・・・・・








やべー、死にそー・・・










―――――あ、






ステージのすぐ下には幸村くんを少しでも近くから見ようと

たくさんの女の子が集まっていた。





その中にひときわ目立つ赤色と銀色の頭。










―――――ブン太くんとにおーやさんだ。








ブン太くんは私を見つけると大きく手を振ってくれた。


におーやさんはきっとブン太くんに無理やり前のほうまで連れてこられたんだろうな。

私の顔を見て軽く舌をだしてきた。








2人の姿を見てたら自然と表情がゆるみ、心が落ち着くのがわかった。








私は視線をステージ上に戻して


クラスメイトたちと目を合わせてうなずき合い





音楽が鳴り始めるのを待った。
















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だらだら長かったー・・・
読んでくださってありがとうございました。