「あれ?あそこに誰かいるぞ。」
「ほんとだ。先に出発したA組のやつらじゃねーか?」
「おっ、ついに追いついたか!」
先頭を歩く男の子たちが、はしゃいだような声を上げる。
『前の班に追いついたの?』
「みたいだな。」
『けっこう後に出発したはずなのにねー。』
「あいつらが道に迷ったんじゃねぇか?」
ジャッカルの隣を歩いていたら、確かに前方に人影が見えた。
そのまま私たちが歩き続けると
どんどんその人影が近づいてくる。
あれ・・・?
そんなに速く歩いてるわけじゃないのに
どんどん近づいていくなぁー・・・
って、彼ら立ち止まってね?
056 立海合宿1日目 合流。
完全に前の班が見えるようになると
1人の女の子が大きめの石に座り込み
それを女子2人と男子1人が心配そうな顔で取り囲んでいるのが見えた。
残りの2人の男の子も困った顔で呆然と立ってる。
・・・なんかあったのかな?
彼らもこっちに気づいたみたいで、
なんだか気まずそうに顔を見合わせていた。
「あ、あれって石立くんじゃない?」
「え?どこどこ?」
「ほら、あの花岸さんの前に座ってる・・・」
「ほんとだ。どうしたんだろう?」
後ろを歩く女の子たちの声が私のところまで届く。
あの座ってる男の子が"石立くん"か。
確か彼もイケメンって聞いたことあるなー。
つか、この学校イケメン多すぎでしょ。
「お前らどうしたんだー?休憩中か?」
ついに前の班に追いつき、先頭を歩く男の子が彼らに声をかけた。
「いや、花岸がケガしたみたいでさ・・・」
「みんなほんとにごめんね。私が足ひねっちゃったから・・・」
「気にないでよ。花岸さんが悪いわけじゃないって。」
「でも・・・・・・」
少し涙目になる女の子を"石立くん"がなぐさめる。
わお、"石立くん"って顔もイケメンだけど中身もなかなかのイケメンじゃないか。
ふと彼らの足元を見ると、
"花岸さん"は山に来るのにはふさわしくないヒールの靴を履いていた。
あー、確かにその靴じゃ絶対つまずいちゃうよね。
まぁ、かっこいい男の子が同じ班でおしゃれしたい気持ちは分かるけど・・・
その人に迷惑かけてちゃ元も子もないって。
「ま、悪いけど俺たちは先に行くぜ。」
「じゃーなー。」
『え?』
「こいつら放っといていくのかよ。」
先を行こうとする同じ班の男の子を見て、私は思わず声をあげる。
ジャッカルも私と同意見みたいで、彼らを呼び止めた。
「おいおい、他のクラスだろ?」
「早く行こうぜー。」
ジャッカル以外の男子は、完全に早く行きたがっている。
女の子2人も、イケメン"石立くん"の前ということで心配そうな顔はしているが
どことなく先に行きたいオーラが出ている。
まあ確かにこのまま私たちがいても仕方ないけど・・・
このまま置いていくのはさすがに気が引ける。
せめてテーピングさえあれば、してあげるんだけど
持ってきてないしなー
・・・・・・いや、ちょっと待ってよ。
私は急いで背負っていたリュックを下ろしてポケットのチャックを開ける。
あ、あったー!
そーいえば合宿中になんかの拍子で左腕が痛くなったらいけないと思って
テーピング入れといたんだった!
昨日の私、グッジョブ!
『ごめん、みんな先行ってて。すぐ追いつくから。
花岸さん、ひねった方の足出して?』
私が足元に座ってそう言うと、彼女は不思議そうな顔をしていた。
ジャッカル以外の班のみんなは、私のことを気にしながらもゆっくり先に進む。
「がテーピングしてくれるってよ。
腕は俺が保障するから。」
ジャッカルにそう言われて納得したのか、花岸さんは右足を出して靴下を脱いだ。
『ジャッカルは行かないの?』
「俺が行ったら、お前とはもう会えない気がする。」
『そんな大げさな・・・』
否定できないのが辛いとこだわ。←
テーピングの用意をしながら、花岸さんの足首を見つめる。
あー、たしかに赤くなって腫れてるかも・・・
つーか最近、私の周りでねんざする人多くない?
学校でテーピングしたのだって入学してからもう3回目だし・・・
そんなことを考えながら手を動かしていると
あっという間にテーピングは完成した。
うん、だいぶ上手くなったな。
バイトの成果がでてきたかも。
『これで歩けるとは思うんだけど・・・大丈夫?』
「あ、ほんとだ。全然痛くない。ありがとう。」
「わざわざ俺らの班のために悪かったな。
でも助かったよ。さんきゅ。」
『良かったvじゃあ私たちは先に行くね!お大事に!』
「お前らも気をつけて来いよ〜。」
私はふと視線を感じてそちらを見ると石立くんと目が合った。
すぐにそらされたけど、その彼の顔が赤い気がする・・・
私は彼のことが少し気になりながらも
花岸さんが無事に立って歩いたのを確認して
班の皆に追いつくためにジャッカルと先を急いだ。
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オリエンテーリング懐かしいです・・・