〜♪〜〜♪〜
・・・んー?
〜♪〜♪〜〜♪〜
・・・ふぁ〜あ・・・・・・なに、電話?
ベッドに寝転び、目をつむったまま
手探りで頭上の携帯電話を探し当てる。
そしてそのまま相手を確認することなく通話ボタンを押して
自分の耳にゆっくり当てた。
《もしもし、っ!?今どこにいるのよ!?》
電話の相手は真菜子からだった。
声の様子からして、かなり焦っているみたい。
『どこってー・・・家だけど。』
《うそ!?ちょっと早く来て!
もうとっくに集合時間は過ぎてるよ!?》
『集合時間ってー・・・なんの?』
《なに言ってんのよ!今日は立海合宿の日でしょ!?》
『・・・・・・まじ?』
054 立海合宿1日目 悪夢。
『・・・・・・っていう夢を見ちゃってさー。目覚めサイアク。』
「あー、それで今日は来るの早かったわけね。」
『うん。』
いやー、起きたら冷や汗まじハンパなかったから。
何回時計を確認したことか・・・
結局5時半に飛び起きてから2度寝するのが怖くてずっと起きていた。
ヒマだったから持ってくるはずのお菓子も1つ食べちゃったし。←
バスで隣の席に座った真菜子と話していたら、2時間ほどで合宿所に到着した。
森林に囲まれた、緑あふれる場所。
うん、いかにも宿泊研修っぽい。
バスを降りたら、まず1年生全員が体育館みたいなとこに集められて
学年集会が行われた。
学年主任の先生や生活指導の先生が次々と出てきて
この立海合宿の意義とか目的なんかを長々と語っていく。
ふぁーあ、これいつまで続くんだろー・・・
本日20回目となるあくびをし終わってぼーっと考えていたら
次に全体の前に立った先生を見て、
でかけていた本日21回目のあくびがひっこんでしまった。
『あ、』
「どうしたの?」
突然つぶやいた私に気がつき、隣に座っていた真菜子が小声で話しかけてくる。
『ううん、なんでもない。
あの人やっぱ先生に見えるなーって思っただけ。』
「あれ、真田くんのこと知ってんの?」
『んー、まぁね。
この前の服装検査で捕まっちゃったんだ。』
「うそ、まじ?
真田くんって超まじめで厳しいって有名だけど・・・大丈夫だった?」
『あー、まぁなんとか・・・』
一瞬、先生かと思ったけど、そういえばあの人タメだったな・・・
真田くんは風紀委員代表として、この合宿の諸注意などを読み上げていた。
はっきりとよく通る声で
聞いているこっちがなんとなく気が引き締まる。
今言ってる規則なんかを破ると
先生って言うより真田くんに怒られそうかも・・・
私は本日21回目のあくびをしながら
みんなの前に堂々と立つ真田くんをぼーっと見つめていた。
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「あー、やっと終わった!」
『疲れたね〜・・・』
長かった学年集会からやっと解放され
各自荷物を自分達の部屋にそれぞれ持っていくために
生徒達はぞろぞろと体育館を出て行く。
私と真菜子は出口の生徒達の波が少しおさまるのを待ってから
体育館を出ようと立ち上がった。
出口へ向かって歩いていると、私たちの少し前を
真田くんと(確か)柳生くんが話しながら歩いているのが目に入った。
すると2人はきょろきょろと周りを見渡して
―――――私のところで視線を止めた。
そして2人でなにやら話して、出口へ向かう生徒の波に逆らいながら
こちらの方へ歩いてくる。
え、な、なに・・・?
ピアスなら確認しなくても、今日もしてますよ・・・?←
「お前は確か、幸村と同じクラスの・・・」
「さんですよ。」
「そうか、だったな。」
『あ、うん、そうだけど・・・』
突然私の前に立って話しかけてくる真田くんと柳生くん。
隣を見ると、真菜子も何事かと目をぱちくりさせながら状況を見守っている。
すると真田くんが1枚の紙を私のほうに出してきた。
「すまないが、これを房山に渡してくれないか?」
「今朝、彼女にだけ渡しそびれていたんです。
集会が終わってから渡そうと思っていたのですが
もう部屋に帰ってしまったみたいで・・・」
房山さんって言ったら、うちのクラスの風紀委員の子だっけ。
真田くんに続けて、柳生くんが申し訳なさそうに言ってくるから
そんな彼の頼みを断れるわけがない。
服装検査のときの借りもあるしね。
『あ、いいよ、全然。たぶん隣の部屋だし。』
部屋割りは各クラス男女3部屋ずつ、計6部屋が割り当てられていて
1部屋だいたい6人くらい。
房山さんは同じ部屋ではなかったけど、たぶん隣の部屋だろうから
すぐに渡せるはずだし。
「すまないな。」
「ありがとうございます。」
『いえいえ全然。ちゃんと渡しておくからね。』
「そういえば、あのとき災いとやらは起こらなかったのか?」
『へ?』
房山さんへ渡す紙を真田くんから受け取ろうとすると
ふと思い出したように彼が言った。
「ピアスを肌から離そうとすると災いが起こると言っていただろう?
そうとも知らずに俺が外せと言ってしまって・・・」
『あー、あれね!大丈夫、ほんと大丈夫!なにもなかったから。』
そういえばそんなこと言っちゃったっけ・・・
まだ信じてたんだー、真田くん。
見た目は老けてるけど、頭の中はけっこう純粋なんだね・・・←
隣の真菜子を見ると、不思議そうな顔で真田くんと私の顔を見比べている。
柳生くんはあいかわらずの苦笑いで、真田くんの手から紙を取って
「はい、これお願いしますね。」と手渡された。
私はなんとなーくこの場に居づらくなって
紙を受け取ってすぐに、真菜子の手を引いて体育館を出た。
あー・・・・・・良心が痛む。
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真田いいキャラしてます。