呼び出された場所に向かうと
そこにいたのは照れてうつむく1人の男の子
ではなく。
6、7人の派手目なお姉さまたちでした。
・・・やっぱ、そーゆー感じですか。
049 お呼び出し。
お姉さまたちは私の姿を確認すると
互いに顔を見合わせて、にやにやしながらこちらに近づいてくる。
うわー、まじかよー・・・
「あなたがね?
急に呼び出しちゃってごめんなさいね。
あんな呼び方だったから、男の子からの告白だとでも思ったかしら?」
「モテるらしいものね。」
そう言いながらくすくすと笑う彼女たち。
目の前に立ったお姉さま方の名札を見ると
3年生の先輩であることがわかった。
それにしても、なんつー嫌味な・・・
いや、どうやって断ろうかとか考えてたけどね?←
お姉さま方の気迫に押されて曖昧に微笑んでいると
彼女たちは一歩、また一歩と近づいてきて
完全に取り囲まれてしまった。
「なんで自分が呼び出されたか、わかってんの?」
『いや、ちょっとわかんないです・・・』
あ、これやべーんじゃね?
だってこれ言われたの本日二度目だし・・・
私なんかしましたか?(泣)
「あんた色目使ってテニス部員に近づいてんでしょ。」
「みんなにちやほやされて、さぞ気分がいいんでしょうけど
1年生のくせにちょっと生意気すぎじゃない?」
『いや、そんなつもりは全然ないんですけど・・・』
先輩たちのすごい剣幕に押されながらも
誤解を解こうとおそるおそる反論する。
「ふーん、なるほど。
あんたにそのつもりがなくても
男のほうから寄ってくるって言いたいわけね。」
「うわー、なにそれ。超むかつくー。」
『いや、違・・・』
なんつー被害妄想だ。
この人たちとは会話が成り立つ気がしないって・・・
「しかもあんた、他の学校にまで手をだしてるらしいじゃない。」
『え?』
「とぼけるんじゃないわよ。
山吹の千石くんと2人でよく会ってるんでしょ?」
「どーやってたぶらかしたのか知らないけど
あんまり調子に乗ってると痛い目見るわよ?」
『いや、キヨはそんなんじゃ・・・』
彼女たちの口からキヨの名前がでたことに少し驚いたけど
まあ確かに顔はかっこいいし、女の子大好きなナンパ師だし
このへんじゃ有名なのかもねー
って、今はそんなことを気にしている場合ではない。
早くこの状況から脱しなければ。
「じゃあなに、千石くんのほうから言い寄ってくるだけってこと?」
「まあその千石くんも、あんたの顔と身体目的でしょうけど。」
「あはは、確かに〜v」
「そういうのって哀しいよね〜。」
・・・もうなんとでも言ってくれ。
正直キヨのことをそんなふうに言われて腹は立つけど
言い返したら逆上させるだけだし
もう言いたいことは言わせとこう。
―――――ザッ
『痛ッ・・・』
私がうつむいてずっと黙っていたら
つま先に激しい痛みが走る
―――――先輩のうちの1人が私の足を思いっきり踏んでいた。
視線を上げてその先輩の顔を見ると
口元に不気味な笑みを浮かべ、私を見下ろしていた。
「テニス部とはもう関わらないことね。
・・・もう、次はないわよ。」
かなり殺気の含まれた視線で私を威嚇してから
私のつま先の上から足をどけて
お姉さまたちは満足そうに帰って行った。
い、痛かったー・・・
そんな思いっきり踏まなくてもいいのに・・・
ていうか、テニス部と関わるなって言われても
友達なんだから仕方ないと思うんだけどなー・・・
別に色目とか使ってないし・・・あーぁ・・・
それにしても・・・
2回もお姉さまに叱られる
というか、いちゃもんつけられるなんて・・・
今日はなんという厄日なんでしょうね。
もうこういう日は家で大人しくしてるに限ります。
・・・ま、もう夕方なんですけどね。
というわけで帰ります。
みなさん、さようなら。
私はため息をつきながら、汚れてしまった靴を軽くはたいて
マンションへ向かって歩き出した。
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嫌なことは重なるもの。