よし、こんなもんだろv
只今、保健室でポスター製作中。
ほら、よく水道のトコに貼ってあるじゃん?
"手洗いうがいをしっかりしよう"的な。
それを保健委員がクラスで1枚作らなきゃいけなくて
なんも考えずに引き受けてたら
締め切りが今日までって言われて・・・
ペンとかなんにも持ってなかったから
保健室でペンを借りて、急いで作り始めたのが今から30分前。
めっちゃ集中していたから、この短時間で完成できました。
うん、我ながらなかなかの出来栄えv
「失礼しますー。」
私がソファに座って、完成したポスターの最終チェックをしていると
保健室のドアが開いて誰かが入ってきた。
「『あ、』」
自然と入り口のほうに視線を向けると、予想外の人物と目が合った。
045 ポスター。
『ばかひろじゃん。どうしたの、部活は?』
「今日はミーティング。んで今終わったとこ。」
『ふーん。帰んないの?』
「・・・今日家の鍵忘れたから帰っても家入れねーの。」
『うわ、ばっかー。さすがばかひろ。』
「うっせーよ。お前はなにやってんだよ。」
『ポスター書いてたの。ほら、上手くない?』
「・・・なんだこれ。」
私が満面のどや顔で見せたポスターを見て
ばかひろは一瞬固まってから
視線をポスターから私の顔にうつした。
『え、ライチューさまじゃん!ポケモンの。知らない?』
「いや、知ってるけど・・・
俺の記憶が正しければライチューって
こんなに気持ち悪い生物じゃねーだろ・・・」
『これのどこが気持ち悪いんだよ!可愛いじゃん!』
「これを可愛いと思うお前の感性と
これをライチューとして描いているお前の絵心と
これをライチューだと思えるお前の脳みそは
哀れを通り越して心配になるよ。」
『ご心配なく。』
一切心配している様子が見えないばかひろは
どさっと向かいのソファに倒れこんだ。
『芸術家とは、理解されるのに時間がかかるものなのだよ。』
「へぇー。つか、先生は?」
『今は職員室。そろそろ帰ってくるんじゃない?』
「ふーん。」
私はとりあえず"傑作"ポスターをみんなのポスターと同じ箱に提出して
本棚(先生の私物)から雑誌を取って再びソファに座った。
向かいのソファに寝転んでいるばかひろも
自分のかばんからサッカー雑誌をとりだして眺めている。
あいかわらずサッカーバカひろだね〜
私が彼をチラリと見てから雑誌に集中しようとすると
突然、保健室のドアが勢いよくガラガラッと開く音が聞こえた。
「ちゃんいる!?」
私はドアに背を向けてソファに座っていたため
誰が入ってきたのか分からなかったけれど
ドアが開く音と同時に聞こえた自分を呼ぶ声には心当たりがあって
入り口のほうに顔を向けた。
『ブン太くんじゃん。そんなに急いでどうしたの?』
振り向いた先には、やっぱりブン太くんがいて。
練習着姿だからきっと部活中なのだろう。
ここまで走ってきたせいか、かなり息が上がっている。
そんな彼を不思議そうに見ていたら、
ブン太くんが私のそばまですごい勢いで飛んできて
いきなり腕をつかまれた。
「ちゃん、ちょっと来て!」
『え、えっ!?』
腕をひっぱられたことによって反射的に立ち上がる。
向かいのソファに座っているばかひろを見ると
彼も呆然として成り行きを見守っていた。
『どうしたの?』
状況がまったく飲み込めない私を
ブン太くんが腕をひっぱって、どこかへ連れて行こうとする。
「先輩が足ひねったみたいなんだよ。
しかも立ち上がれないくらい痛いみたいで・・・」
『そりゃ大変だねー・・・て、なんでそこで私?
マネージャーさんとかの出番でしょ。』
「試合近ぇからこれ以上悪化させないように
テーピングしなきゃいけねーんだけど
うちのマネージャーでテーピングできるやついねぇんだよ。」
『そっかー・・・あ、じゃあちょっと待って。』
事情を理解した私はブン太くんに手を離してもらって、
保健室の救急箱の入った棚へ向かう。
手ぶらで行っても仕方ないからね。
棚のガラスの扉を開いたとき、ふとひとつの疑問が頭にわいてきた。
『あれ?でも、なんで私がテーピングできること知ってんの?』
手を動かしたまま、顔だけブン太くんのほうに向ける。
「あぁ、仁王がちゃん呼んで来いって。」
『なるほどね。』
確かにちょっと前、におーやさんの前でテーピングしたことあったな。
まったく、放課後の優雅なひと時に呼び出してくれちゃって。
におーやさんにはなんか奢ってもらわないとね。
『じゃあ、ばかひろ、私このまま帰るから。』
「へまって悪化させるなよー。」
『私の超高等最先端技術なめんな。』
せわしなく準備する私を横目に
ソファで再びごろごろし始めたばかひろに
いつも通りのあいさつをして。
救急箱にテーピングに必要なものをつめこみ
ブン太くんに腕をひかれながらテニスコートへ向かった。
*************************
次はブン太目線でv