「そういえばお前さん、昨日の服装検査で捕まっとったな。」
ブルーシートの上でごろんと寝転がっていた私の視界には
青空がいっぱいに広がっていたけど
上の端のほうに、ちょこっとにおーやさんが見えた。
043 デジャヴ。
『あ、見てたんだ。』
「思いっきり真田に怒られとったし。」
『そーそー。びっくりしちゃったよー。
しかも、まさかあの人が同い年なんて・・・』
「クックッ。確かに真田は老けとるからな。
それにしても、なんで捕まったんじゃ?」
『んー?ピアスー。』
そこまで言ってから、私は上体を起こして
におーやさんのほうを振り返る。
『てか、におーやさんの髪色がセーフで
私のピアスがアウトっておかしくない?』
「うちは頭髪に関する校則はないけぇ。」
『いやいや、ありえないってー。
だったらピアスの校則もいらないでしょーよ。』
ため息をつきながら視線を空に戻して話していると
急ににおーやさんが立ち上がって、私の前まできてしゃがんだ。
自然と視線を空からにおーやさんに向けると
彼は私の目を見つめたまま右手をこちらにのばしてきた。
その手は私の左頬に軽く触れ
流れるような動作で横髪を耳にかける。
あれ、なんかデジャヴ・・・
自然ときのうの幸村くんを思い出す。
でもそのときと違うのは、におーやさんの手が私の髪を耳にかけたまま
まだ耳に触れていること。
そして私のピアスをのぞきこむ。
「これに気づくとは、真田もなかなかやるのぅ。」
―――――っ///
のぞきこんだことによって
必然的に彼の顔が私の耳に近くなっている。
その状態で発した彼の声は、私の耳にダイレクトに届いて
妙に色っぽく感じて・・・
自然と耳に熱くなるのがわかった。
―――――耳元で囁くとか反則///
慌てて視線をにおーやさんから外し
空を見上げて顔の熱を冷ます。
「耳、赤いぜよ。」
におーやさんはさっきから体勢を変えることなく
よりいっそう低い声で言う。
その少し声に笑いが含まれているのがわかった。
まーた、耳元でささやくなって!
絶対おもしろがってんじゃん!
『照れてんのー。』
「でも照れることがあるんか?」
『そりゃ女の子だからね。』
「・・・お前さん、おん『女の子だからね。』
このやりとり前もしたっつーの...
におーやさんがふざけてくるから
顔に集中していた熱がだいぶ冷めてきたとき
におーやさんの手が離れて
彼が立ち上がったのが視界のはしに写った。
「お前さんやっぱり面白いのぅ。」
『嬉しくなーい。』
私が頬をふくらませてすねながらそう言うと
ちょうど予鈴がなった。
「次、出るんか?」
予鈴を聞いてブルーシートを片付け始める私を
におーやさんがぼーっと見ている。
『うん。さすがに毎回は休めないし。
なんだかんだで毎週サボってるから今日くらい出ないとねー。』
「ふーん。」
『におーやさんは次もサボりですか。』
「そうじゃなー。」
『頭いい人はいいねー。
あ、シートいる?気兼ねなく寝れるよー。』
「・・・お前さんさっきシートにソースこぼしとったじゃろ。」
げっ、見られてたか・・・
『い、いや、でも1滴とかだし。もう乾いたし。
それに汚れてない面を出しといてあげるってー。』
無意識に止まってしまった手を再び動かして釈明する。
それを聞いてにおーやさんはまたクックッと笑ってたけど
私が(きれいな面をだして)しいたシートの上に
大人しく寝転んだのでよしとしよう。
『じゃ、私いくからねー。ごゆっくりー。』
におーやさんが寝転んだまま手を軽くあげたのを見てから
私は教室へ戻る階段を駆け下りた。
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5月編が長い・・・(笑)