「さん。」
声のした方を振り向くと、
幸村くんがこちらへ歩いてきているのが見えた。
040 ピアス。
『あ、おはよう、幸村くん。』
「おはよう。」
うーん、今日もなんて爽やかな笑顔だ。
さっきまでのブルーな気分も吹っ飛んでいく気がする。
「こんなところで、真田と柳生となにしてるの?」
『それが、ピアスが違反だとかで呼び止められちゃってー・・・』
「あぁ、確かにさんはいつもピアスしてるよね。」
そう言いながら、幸村くんが私の正面に立ってこちらに手を伸ばす。
え―――?
伸びてきた彼の手は私の左頬に少し触れたかと思うと
耳の前にあった髪を耳にふわっとかけて離れていった。
周囲では女の子たちの悲鳴が小さく聞こえる。
私は突然のことに驚きながらも、
彼が触れた耳に少しずつ熱が集まっていくのを感じていた。
「そのピアス、可愛いよね。」
『あ、ありがとう///』
よく見えるようになった左耳のピアスを見ながら幸村くんが微笑む。
あー、いま絶対耳赤いし。
くぅー、この人ふいにこういうことするから油断できないよね。←
「おはようございます、幸村くん。」
「おはよう。2人とも朝から大変そうだね。」
「そんなことはない。
俺たちは委員としての仕事をしているだけだ。」
「あぁ、そういえば2人とも風紀委員だったね。」
頑張って顔の熱を冷ましていると
目の前の3人が何気ない感じで会話を始める。
なーんか、意外と仲良さそうだね、この3人。
共通点とか全然見つかりそうにないけどなー・・・
まあ、内部生ってみんな友だちなのかな。
そう考えていると、幸村くんが私のほうをみて
いつものようにふわりと微笑む。
「じゃあさん、そろそろ教室に行こうか。」
『うん。』
一時はどーなることかと思ったけど。
真田くんの(バカ・・・いや、常識はずれな)素直さと、
柳生くんの優しさによって
なんとかピアスの没収だけはまぬがれた。
幸村くんもきて、完全にごまかせたし。
うん、一件落着!
私は歩き出す直前に柳生くんを見て
口パクで"ありがとう"とだけ言っておいた。
だって、私の見え見えのウソをわかっていながら見逃してくたんだし。
彼は私の口パクが読み取れたのか、笑顔で軽く会釈を返してくれた。
2人並んで何歩かいったところで、突然幸村くんが立ち止まった。
どうしたんだろー?と幸村くんの顔をうかがうと
彼はゆっくり後ろを向いた。
その視線を追っていくと、真田くんと柳生くんがこっちを見ている。
「あ、さんをあんまりいじめないであげてね。」
隣にいたから、はっきりとはわからなかったけれど
その爽やかな笑顔から
なんとなーく黒いオーラがでていたのは気のせいだろうか
・・・気のせいってことにしておこう。
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ついに40話まできました。
ここまで読んでくださってありがとうございます。