ふぁー、眠たー・・・








あくびによって目ににじんできた涙をぬぐいながら

校門をくぐる。









ザワザワザワ―――










んー?なんか今日はいつもより騒がしい気がするなぁー・・・
















039 服装検査。














「あ、今日服装検査の日だっけ。」

「そうだよ。でも大丈夫でしょ。」

「そうそう。うちの学校、服装に関する校則とかゆるいし。」











私を追い抜いていく女の子たちの会話が

自然と耳に入ってきた。








へぇー、服装検査とかあるんだ。





確かにあちこちに黄色い腕章つけた人が立ってる。



たぶん"風紀委員"だよね。













まあでも服装検査とか私には関係ないな。



髪はブラウンにしてるけど・・・

いやー、赤髪とか銀髪とかだっているんだし。


スカートだって短いといってもみんなと同じくらいだし。



私は余裕だわー。















「おい、そこの1年女子。」








『へ?私?』










1人の男の先生と目が合って、突然呼び止められた。



その先生の隣には、眼鏡をかけた1人の生徒もいる。





腕章をつけているところからみて、風紀委員だろう。










一人呆然と立っていると、その2人が私のほうへ近づいてきた。





「その耳につけているものはピアスか?」


『え?あ、はい。そうですけど・・・』



確かに私は両耳にピアスをしている。


とはいっても、それは小さいピンクのシンプルなピアス。

これが校則にひっかかるとは思えないけど・・・





『え、もしかして・・・

 ピアスって違反なんですか?』



赤髪とか銀髪とかセーフなのに?


いやいや、それはないでしょーよ・・・





「当たり前だ。生徒手帳に書いてあるだろう。」


『いやー、生徒手帳をじっくり見る生徒なんていないですって・・・』


「たるんどる!」



いきなり大きな声で怒鳴られたので、驚いて肩がびくっとなってしまった。


周りにいる生徒たちも、こっちを見ながらひそひそ話してるし。



あー、恥ずかし・・・





「落ち着いてください、真田くん。

 いきなり大きな声を出しては怖がらせてしまいますよ。」




先生の隣の眼鏡くんが、先生をなだめた。

その先生はというと、「ふむ、そうだな。」なんて言いながら腕を組んでいる。










・・・あれ?



でもこの人いま、先生のことを真田"くん"って・・・?





先生(だと思っていた彼)をよくよく見ると

たしかにみんなと同じ制服を着ている。





そして何気なく名札を見ると



そこには1年G組の文字。










こ、この人が・・・・・・・・・1年生?






「すまなかったな。突然大声で怒鳴ってしまった。」


『いや、大丈夫ですけど・・・』





それより私は、あなたが同級生だという事実のほうが

大丈夫ではないです・・・










「だが、校則を知らなかったとはいえ違反は違反だ。

 今すぐ外せ。俺が先生に渡しておく。」



え、まじ?

もしかして没収!?


いや、まじで困る・・・





『いやー、これは・・・』



あー、どうしよう。

没収だけはまじでムリ。





『あー、んーっと・・・

 お世話になってる占いの先生に

 これを肌から離そうとすると災いが起こるって言われてまして・・・』





いや、これはさすがに無理があるか。



こんなんで騙されるやつなんてどこにも・・・・・・





「ふむ、そうなのか。」



ここにいたー!!








『そ、そうなんですよー。

 だから今回は見逃してもらえないですかね・・・?』





こんな純粋無垢な人に嘘をつくなんて

ちょっと良心が痛む気がするけど・・・


でも今回はそんなこと言ってる場合じゃない。








「そういうことなら仕方ないか。だが今回だけだ。

 柳生もそれでいいか?」





うん・・・・・・この人、ほんとに大丈夫かな?



いつか悪い人に騙される気がするよ。





隣の"柳生くん"を見ると、彼も苦笑いをしている。

でも、真田くんに何も言わないところを見ると

見逃してくれるつもりなのだろう。






『ありがとうございます。』





とりあえずお礼だけ言って、早くこの場から離れようと思っていると―――















さん。」










突然声をかけられて、私は後ろを振り返った。
















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真田と柳生との出会いでした。