におーやさんに近づいていくと。

木の陰で見えなかったところに女の人が見えた。





あ、ひとりじゃなかったんだ・・・
















033 やっぱりモテ男。















あれ、もしかして告白現場だったりする?



それって近づいちゃダメじゃね・・・?








すぐに向きを変えて、ここから離れよう





と思ったんだけどー・・・










女の子の体がこっちに向いたから


彼女の視界に入らないように木の陰に隠れた。















うわ、思わず隠れちゃったよ。


ここ離れるタイミング失ったー・・・















「・・・仁王くん、好きなの。付き合って?」

「いま彼女はいらん。」

「いつもそう言ってるらしいわね。」



やばい。やっぱ告白じゃん。

だいぶ近づいちゃってるし、まわりも静かだし


会話丸聞こえなんですけどー!?





「じゃあ、彼女じゃなくていいから

 オトモダチになってよ。」










そう言う女の人の声が聞こえ、少し人の動く気配があったあと、

あたりには静寂が訪れた。


話し声はおろか、物音ひとつしない。










どうしたんだろ・・・?





不思議に思って、そーっと木の陰から後ろをのぞいたら


女の人が両腕をにおーやさんの首に回して








―――――キスをしていた。















あー、

お友達って・・・


そーゆー"オトモダチ"ですか。





私は急いで、元いた場所に隠れた。















後ろから聞こえる「・・・ん、・・・ぁ・・・」という艶やかな女の人の声が静寂を破る。



ときどき響く、チュッというリップ音。















おーおー、

いまどきの高校生は学校で《でぃーぷきっす》なんて、

なかなかやりますなあ。





・・・こっちが照れるっての!




















「早く部活、行きたいんじゃけど。」



さっきとなにも変わらない、におーやさんの声。

慣れてんの、かな・・・?





「わかったわ。

 じゃーね、仁王くん。またね。」





や、やべ。

こっち来たらどーしよ・・・



そう思ったらちょっと冷や汗が出てきたけど、





そんな私の心配をよそに

軽やかな足音は、どんどん小さくなって聞こえなくなった。





よし、向こうにいったみたい。

良かったー・・・










「んで?

 お前さんはそこで何しとんじゃ?」
















私が木にもたれかかって、胸をなでおろしていると

後ろからにおーやさんの声がした。








え、もしかして、もしかしなくても・・・





私に言ってます?










おそるおそる後ろを振り返ると、



案の定、におーやさんと目が合った。
















*************************

でぃーぷきっすって(笑)