4月最後の土曜日。



久しぶりにのんびりした休日を過ごし、夕食も食べ終わってゆっくりしていると、ケータイが鳴った。





――――――――――――
【受信MAIL】
20**/04/25 19:28
[FROM 千石清純]
[title]ちゃーんv
−−−−−−−−−−−−
明日ひま?







――――――――――――





見ると、キヨからのメールだった。





――――――――――――
【送信MAIL】
20**/04/25 19:30
[TO 千石清純]
[title]Re:ちゃーんv
−−−−−−−−−−−−
うん。ちょーひまー。







――――――――――――





――――――――――――
【受信MAIL】
20**/04/25 19:33
[FROM 千石清純]
[title]Re:Re:ちゃーんv
−−−−−−−−−−−−
じゃあ 遊ぼうよv







――――――――――――










014 下手くそは。








日曜日、午後1時30分。


キヨとの約束の時間まで、あと30分。



簡単にしか化粧してないけど、相手はキヨだし。

まっ、こんなもんでしょ。←








待ち合わせは駅だからー、15分前に家を出れば間に合うか。


いやでも、CDショップ行きたいからもう家でて行っちゃお。


準備はもうできてるし。










マンションを出て、いつもなら公園沿いをいくんだけど。

近道のために、今日は公園の中を突っ切る。





日曜日なこともあって、公園はいつもに増してにぎやかだった。







そーいえばあの子、今日もやってんのかな・・・?





いつもひとりでバスケを練習してる子のことが気になって、バスケコートに目を向ける。



すると、コート内にはあの子だけでなく、彼の友達らしき子供2人と、高校生くらいの男の人が3人見えた。





みんな友達・・・では、なさそーだよね。


なんか言い争ってるようにも見えるし・・・







気がつけば、私の足はバスケコートに向かっていた。










「邪魔するなよ!俺たちが先にやってたんだ!」

「うるせーガキだな。」
「お子サマは広場のところで遊具で遊んどけっての。」

「そっちがあとに来たんだろ!?どっかいけよ!」
「そーだそーだ!」

「なんか文句あるのか?このガキ・・・」







コートにだいぶ近づいたので、彼らの会話の内容が聞き取れるようになった。





口論の内容から察するに、小学生'sが先に来てコートを使ってたのに、あとからきた高校生'sがいちゃもんつけてる・・・って感じ?


そりゃー、高校生'sが悪いじゃん。








「言い合いしてても、らちがあかねーよ。

 こういうときは・・・なあ?」



高校生たちが顔を見合わせてにやりと笑う。



「バスケで決めよーぜ。」

「上手いやつに使われたほうが、コートも喜ぶってもんだろ?」



高校生'sは小学生'sに挑戦的な目を向ける。



「そ、そんな・・・」

「勝てっこないよ・・・」

「どーする?」
 


体格から考えても、小学校中学年くらいの彼らと高校生'sじゃ不利なのは目に見えていた。


少年の友だちは完全に怖気づいている。



でも、彼だけは高校生'sをじっとにらんでいた。





「おい、どーする?勝負せずにここを俺たちに譲るかー?」

「ま、怪我したくなけりゃ、大人しく逃げたほうが利口だぜ?」



高校生'sはあいかわらず、にやにやしながら小学生'sを見下ろしている。










あいつら、腐ってんなー。


小学生相手にケンカ売るなんて、ダサすぎ。



でも、どーすんだろ、あの子・・・










「・・・やってやるよ。」



少年は高校生'sをにらみながら答えた。


少年の友だちは驚いたように彼を見ている。





「そうこなくっちゃな。」


高校生'sは面白そうに互いに目を見合わせる。





「じゃあルールは、オールコート3対3。

 先に20点取ったほうがこのコートを使えるってことで。

 お前らボールから始めていい。

 これで、なんか文句あるか?」

「ねぇよ。」



こうして、小学生'svs高校生'sのコートをかけたバスケ対決が始まった。















0−2





0−4





0−6








あちゃー・・・



やっぱり体格が違い過ぎる。


高校生'sが圧倒的にボールを支配してる。

小学生'sは、ボールに触れることさえ難しい。



マイボールになっても、上からはたかれてすぐに取られてしまう。





点差がどんどんひらくどころか、小学生'sは1点も取れていない。










「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

「だめだ・・・勝てないよ・・・」



「おいおい、こんなもんかよー!」

「さっきまでの威勢はどーした〜?」





かなり疲れている小学生'sとは対照的に、高校生'sはまだまだ余裕そうだ。















0−9





げっ、スリーポイントかよ・・・


小学生相手に、好き勝手やってんなぁ・・・















0−11





やばいぞー。

正直、これ以上点差が開いたら・・・まじで負ける。





・・・・・・・・・あ、















0−13





無情にも高校生のシュートがゴールネットを揺らす。










「ねぇー、お前ら、まだやんの?」

「もう勝負は見えてんじゃん。俺らの勝ち、君らの負け!」





「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」





小学生'sの体力は、もう限界だろう。


そして、高校生'sの言葉が、彼らを精神的にも追いつめていく。










「下手くそはさっさと消えな。」



さらに追い討ちをかける高校生の言葉。










でも、あの子の目。





―――――まだ諦めてない。















ゲームが再開しても状況は変わらない。



相変わらず、ボールは高校生'sがキープしている。







頑張れ、頑張れ・・・



私は、自然とかたく手を握り締めていた。

まさに、手に汗をにぎっている状況。








あっ!



小学生'sのひとりが、高校生ボールをパスカットした。





ナイス!

よしっ、そのまま速攻!








―――――あっ、





ボールを捕られた高校生が、ドリブルする小学生に激しくぶつかる。


大きな音とともに、小学生は地べたに倒れこんだ。



「お、おいっ!」

「大丈夫か!?」



小学生'sが急いで倒れこんだ仲間のもとへ駆け寄る。





そのすきに、ボールを奪った高校生が得点を決めた。















0−15





「い、痛ぇ・・・」



倒れた小学生は足を押さえたまま立てないでいる。





捻挫でもしたのかな・・・?










「おーい、お前らボールだぞー。」

「早く始めろよー。」


「いや、もう棄権するだろ?」





高校生'sは心配している様子がいっさいなく、へらへらと笑っている。















やば、もう我慢の限界かも。



唇をきつく噛みしめている小学生'sをこのまま見ていることはできなかった。








・・・ちょっとくらいならいいよね?





フェンスの入り口のほうにまわって中に入り、倒れている小学生に近づく。





「おい、お前なにやってんだ?」



勝手に入ってきた私に気づいた高校生のひとりが、私に話しかける。





でも、そんなの無視無視!


今はこの子をみなきゃ・・・





『大丈夫?立てる?』

「あ、うん。」



彼が痛そうに押さえている足首を触って確認する。



んー、腫れてはない、と思うし・・・

大丈夫そう・・・かな?





いきなり現れた私に小学生'sはみんなポカーンとしている。








「おいおい、無視すんなよ。」


高校生のひとりが、後ろから私の肩に手を置いた。








あー、こいつらまじで嫌い。

気安く触んなっての。





私は勢いよく立ち上がって、後ろを振り返った。



肩に置かれた高校生の手は、自然に私の肩から離れる。








「「「―――ッ///」」」



私が高校生'sを順番に見ていくと、彼らは顔を赤くして固まった。








なになに?

顔になんかついてます?


あ、あれか。

私のびぼーに見とれてんのか。←










『・・・ねぇ、』


固まってしまった彼らにしびれを切らして、私が口を開いた。





『選手交代、してもいいかな?してもいいよね?』

「へ?・・・・・・あ、あぁ、別にいいぜ。なぁ?///」

「お、おぅ///」

「そこのガキの代わりだろ?///」

『うん。そーゆーこと。』





『ってことで、はいっ!タッチこうたーいv』と言って、地べたに座り込んだままの少年とハイタッチをする。


いわずもがな、半ば無理やりでしたけど。←





『ってことで、よろしくね?』


ぽかんとしたままの小学生'sににっこり笑いかける。



―――――大丈夫、私に任せて。





小学生'sはまだ、なにがなんだかわからないって顔してたけど、

みんなコクリとうなずいてくれた。



私はそれを見て、またにっこり笑う。










「ねぇねぇ、そこのオネーサン///可愛いね〜///」

「この勝負が終わったら、俺らとデートしよーよ///」

「そーそー///こんなガキんちょは放っといてさ///」





いやいや、君たち。

この勝負に勝ったほうが、このコート使えるんでしょ?


勝負の目的、忘れちゃってんじゃん。





『冗談。なんで、アンタらなんかと。』


冗談は顔だけにして。





「言うねー、オネーサン。」

「強気な女も嫌いじゃないよ〜。」

「あ、そうだ。じゃ、俺らが勝ったらデートしよーよ。ね?」





しつこいなー。

私はしつこい男は嫌いだっつーのー。

ほんとチャラいしー・・・



・・・チャラい?



・・・・・・あれ?なんか忘れてる?





ま、いっか。







『私たちが負けたら、ね。』



高校生たちの実力はさっきまでゲームを見てたから、だいたいわかってる。

彼らに負けはしない。








私の返事を聞いて、高校生たちが「うぉ〜、やったぜ///」なんて盛り上がってる。



それを後ろで聞きながら、私は屈伸をしたりアキレス腱を伸ばしたりして、軽く準備運動をする。








いやーほんと、ヒールじゃない靴にしといて良かった〜。



なんて考えていると、小学生のあの子(いつも練習してる子ね)が私に近づいてきた。



「ねぇ、お姉さん。大丈夫なの?」





自分のせいで私がデートすることになるとでも思ってるのかな?

責任感じてるって顔してる。


友だちが怪我もしているし、不安、なんだよね・・・



ほかの2人を見ても、泣きそうな顔してる。





『だいじょーぶっ!一緒に頑張ろ?』


私が笑顔でそう言っても、彼らの表情は浮かばない。


ま、いきなり来て"大丈夫"なんていっても説得力ないよね・・・


よし、





『はい、手ー、重ねて?』


私はみんなの中央に右手をパーにしてだす。


小学生の3人も、不思議そうな顔をしながら手を重ねてくれた。





『勝つぞー!えいえいおー!』



元気よく言って、手を思いっきり上にあげる。


1番下にあった私の手があがったわけだから、みんなの手も上に投げ出される。





「あはは、姉ちゃんおもしろーい。」

「声大きいし〜。」

『えへへ〜v頑張ろうね〜』


「「「うん!」」」



一瞬、きょとんとしてたけど。


3人に少し笑顔が見えた。





よし、この感じならいけるぞ。










コート(デート?)をかけた3vs3の対決は、小学生's feat.ボールで再開された。
















*************************

忘れられてる彼は・・・?

補足:バスケ
は1回シュートが入ると2点入ります。遠くから打つと3点入ります。