教室には多くの生徒がいて、かなりにぎやかだった。



時間的に、みんな下駄箱から教室に上がってきたんだろうな。

みんな中学のときからの仲良しグループで集まって騒いでいる。



そんな中私は、あいかわらずキヨとメールしながら、ひまをつぶしていた。









006 噂のプリンス。








「ねぇねぇ、外部生、だよね?」


好奇心いっぱいの目をむけて私に近づいてきたのは、女の子3人組だった。

話しかけてきたのは、その中のリーダーっぽい人。



『うん。そうだよ。』

「どこから来たの?県外?」


今度は、同じグループの別の女の子に聞かれた。


『中学のときはアメリカにいたんだよね。』

「え!?まじまじ?」


私が答えたら、近くにいた男の子たちのグループも話に加わってきた。



「ってことはなに、帰国子女!?///

 ハーフかなんか??///」

『いや、どっちも違うんだけどー・・・』

「こらー、オカタク!いまあたしたちとしゃべってんだから、入ってこないでよ!」

「いいじゃねーかよ。俺たちだって仲良くなりたいし。」

「オカタクみたいなのに話しかけられたら、野蛮すぎて怖がっちゃうわよ!」

「あんだと!?ナマコみてーなやつに話しかけられたほうがびびるっつーの!」








・・・なんか、痴話げんか始まっちゃったんですけど。





えーっと・・・





どうすればいいかわからない。

いや、これまじで。



話題の中心は私なんだけど、なんだこの、私を放置して話が進む感じ。

これが、今問題になっているドーナツ化現象か?(たぶん違う)










さん。」



どっかから、私を呼ぶ声がした。


そしたら、軽く言い争いをしていたナマコさん(でいいのかな)が急にしゃべるのをやめてハッと後ろを振り返った。



「あ、幸村くん///」


ナマコさんの後ろにはひとりの男の子が立っていた。


"幸村くん"っていったな、今。

てことは、この人が今朝、噂されてた幸村くんかな?





色白で、深い青色の髪には、軽くウエーブがかかっている。

穏やかな目ときれいな顔立ち。


うーん、たしかにかっこいいや。

上品な雰囲気ただよってるわ〜。

the 王子様って感じ?

噂になるのもわかるわかる・・・





って、そういえば、私この人に名前呼ばれたよね?



さん、ちょっといいかな?」


そう言って"幸村くん"と呼ばれた人は、廊下に向かって歩いていく。


『あ、うん。』


私は席から立って、席の周りに集まっていたナマコさんたちに『ごめんね。』といって、いそいで彼のあとについていった。

後ろでは、「なんで幸村くんには何も言わねーんだよ!」「幸村くんはいいのよ!」という声が聞こえる。








彼は廊下にでると、立ち止まって、私のほうを振り返った。

そして、私としばらく見つめ合う。



彼からの視線も痛いが、廊下にいる女の子たちの視線はもっと痛い。





『あ、あのー、なにか用かな?』


私は、この雰囲気に耐えられなくなって話しかけた。


「いや、特に用はないんだけどね。ちょっと話してみたかったんだ。」


そう言って、彼はにっこりと笑った。





かっこいい人にそんなこと言われるとちゃん照れちゃうわ〜。

でも、話してみたいって、わざわざ廊下にでなくても・・・





あれ?もしかして・・・










人前では言えないこと―!?

秘密の共有は親密な証――!?

早くもこの小説、幸村オチ決定か―――!?(まじかよ)










って、冗談はこのくらいにして。←





きっと、目の前で痴話げんかが始まって困っていた私を放っておけなかったんだろう。

わざわざ廊下に呼び出して助けてくれたんだ。








『ありがとう。』


私はニコッと笑って、お礼を言った。





それを見て彼は一瞬、目を見張ったけど、すぐにもとの柔らかい微笑みに戻った。



「なにかお礼を言われるようなこと、したかな?」

『ううん。私が言いたかっただけ。』


なんとなく―――なんとなくだけど、この人にはお礼の意味がもうちゃんと伝わってる気がした。

本人がこう言うんだったら、これ以上追求して言わなくていーや。








「あ、俺の名前は幸村精市。同じクラスだし、よろしくね?」

『私は!よろしく〜v』


やっぱり、噂の"幸村くん"だったんだねv

あ、そういえば・・・



『そういえば、さっき教室で、私の名前呼んだよね?

 なんで知ってたの?』


ふと疑問に思ったことを、幸村くんに聞いた。


「あぁ、座席表を見ただけだよ。」

『あ、なるほど。』



廊下で2人で話していると、向こうから先生たちが歩いてくるのが見えた。

幸村くんも、私と同じように先生のほうをチラリと見てから私のほうを見る。



もうすぐ入学式の時間なのかな。

そろそろ教室に戻ったほうがいいかなー。


なんて考えていると幸村くんがドアを開けてくれた。



わお、以心伝心!?



いや、もしかして・・・





『心の声、でてた?』

ほら、私無意識に心の声が表面にでてくることあるじゃん?

キヨのときにも、それで笑われたし・・・



「え?」


幸村くんはきょとんとして私を見つめた。



よし、思い違いだったみたいだ。


・・・ってか、急に意味わかんないこと言って、完璧変な子じゃん!





私は恥ずかしくなって、幸村くんにお礼を言って、急いで教室に入り自分の席にもどった。



ナマコさんたちも、もう自分の席にもどっていた。








あ、友達できたって、キヨに報告しとこ。








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【送信MAIL】
20**/04/08 08:47
[TO 千石清純]
[title]報告。
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友達通り越して王子様ができ
ました。(笑)






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幸村くんとの出会いでしたv
クラス替えのときを思い出しながら書いてるとなんか懐かしくなりました(笑)
そして、キヨとは相変わらずいい関係ですv