新しい制服に身を包み、校門の前でひとつ小さく息をはく。





≪立海大付属高等学校≫



―――私がこれから通うことになる学校。


今日は、入学式。

あー、緊張してきた。












005 ぴかぴかの1年生。








目の前の大きな校門をくぐってまっすぐ進むと、広い下駄箱が見えてくる。

そこにはクラス分けの表がはってあり、新入生がたくさん集まっていた。


みんな新しいクラスメイトの名前を見て、一喜一憂し、盛り上がっている。




あ、そっか。

ここってエスカレーター式の学校だから、内部生はもうみんな知ってるんだ。


まあ、とりあえず私はどこのクラスか見なきゃね。


それにしても、すげー人、人、人・・・

立海大ってこんなマンモス校だったんだね。

クラス表なんか見えりゃしないって・・・



周りの子たちが、チラチラ私のほうを見て、何か言ってる。


たぶん、私が外部生だから≪あいつ、見かけねー顔だな≫的な感じだろうな。

外部生ってそんな少ないのかな・・・?





人ごみをぬってぬってぬって・・・進むと、やっとクラス表が見えるところまできた。



「幸村くん、C組だって〜」

「うそ!?あたしB組〜。惜しい〜。」

「あ、でもB組って仁王くんと丸井くんいるよね!?」

「え〜、いいな〜!羨ましい〜v」

「ちょっと、聞いて聞いて!

 さっきめっちゃかっこいい人いた〜v

 たぶん外部生だよ!何組なんだろ〜?」

「えー、まじ?同じだったらいいな〜v」


周りの子がきゃっきゃ言ってる。



まー、どこの学校でもあるよね、こーゆーの。

それより、私は何組だー?・・・


んー・・・A組・・・では、ないみたい。

B組はー・・・うー・・・ない。

えーっと、C組・・・あ、名前あった。

良かった〜、早めに見つかって。



ここにいるとめっちゃ視線感じるから、気まずいんだよね。

早く教室いこ。





靴を履き替えて、C組に向かう。


まだ下駄箱にいる生徒がほとんどなのか、廊下にはあんまり人はいなかった。

少し前に背の高い男の子がひとり歩いてるくらい。





・・・あ、なんか落ちた。


目の前の男の子が、ズボンのポケットから携帯を取り出したとき、紙が一緒にでて廊下に落ちた。



あ、ちょっと!なんか落ちたよ!


私の心の声に気づかず(心の声だからね)、彼は足をとめずに歩いていく。



ったく、しょーがないなあ〜


私はその紙を拾ってから、少し小走りになって、その男の子に追いついた。





『あのー、』


後ろからおそるおそる声をかける。

こう見えて人見知りなもので。

知らない人に声をかけるのって緊張するじゃん?

だから、ちょー勇気出して声かけたのに・・・


止まってくれないんだけど。


こんだけ廊下静かなんだから、聞こえてないはずないし・・・

おい、無視か?無視なのか??





『すみませーん、』


もう少し大きな声で言ってみた。

それでも立ち止まるどころか、こちらを見ようともしない。

こりゃ完全にシカトだな。

こっちは親切心でやってんだよ、こんにゃろー。


よーし、こうなったら・・・





『あのー!』


私は彼の前にまわりこんだ。

これならさすがにシカトはムリでしょ、えっへん。




「あ?」


目の前に立った私を見て、男の子は怪訝そうな顔をした。


うわー、めっちゃ不機嫌そー。

眉間のしわ、ハンパないし・・・怖えーよ。




「なんだよ。」


≪用もねーのに話しかけてくんなオーラ≫全開なんですけど〜

こっちだってなー、話しかけたくて話しかけてるんじゃねーんだかんな!←





『これ、落ちましたよ。それじゃ。』


それだけ言って紙を彼に押し付けて、少し前に見えるC組の教室に入った。



ちょっとムッとした顔しちゃったかな。


まーでも、私は悪くない!

むしろ親切なことをした!

一日一善!

一日五食!(多いし)

一汁三菜!(関係ないし)

健康第一!(もはや勢いだけ)





私は、黒板にはってある座席表を見て自分の名前を確認し、席に向かった。


窓から3列目の1番後ろ。

うん、なかなか良い席。



教室には、男女2、3人のグループがそれぞれいくつかあって話をしていたため、少しにぎやかだった。


友達欲しいけど、話しかけらんないし・・・

うー、大人しく座っとこ・・・



あ、そうだ!

キヨにメールしよーっと♪


キヨとは、買い物を手伝ってもらってからよくメールをする仲になっていた。

この前もまた買い物に付き合ってくれたし。

いい暇つぶしの相手になるv←





――――――――――――
【送信MAIL】
20**/04/08 08:28
[TO 千石清純]
[title]あー、やべー。
−−−−−−−−−−−−
友達たくさんできすぎてつら
い。(笑)






――――――――――――



送信完了を確認して携帯を机の上に置いた。

そしたら、すぐに携帯が震えだして、私はあわてて取った。



――――――――――――
【受信MAIL】
20**/04/08 08:30
[FROM 千石清純]
[title]Re:あー、やべー。
−−−−−−−−−−−−
メールがゆっくりできるくらい
人気者なんだねv
さすがちゃんv(笑)





――――――――――――



完璧にうそがバレてる。



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【送信MAIL】
20**/04/08 08:33
[TO 千石清純]
[title]Re:Re:あー、やべー。
−−−−−−−−−−−−
キヨもすぐ返信くれるってこと
は、そーとー人気者なんだね
v(笑)





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――――――――――――
【受信MAIL】
20**/04/08 08:34
[FROM 千石清純]
[title]Re:Re:Re:あー、やべー

−−−−−−−−−−−−
中学からの友達がいるからご
心配なくv






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くそー。

ぼっち仲間じゃねーのかよう・・・



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【送信MAIL】
20**/04/08 08:36
[TO 千石清純]
[title]Re:Re:Re:Re:あー、やべ
ー。
−−−−−−−−−−−−
ソーデスカ。
てかねー、さっき、親切心発
揮したら、めっちゃ睨まれて
怖かったー。



しゅん。(´・ω・`)
――――――――――――



なんか、キヨとメールしてたら緊張もだいぶ解けてきたかも。


携帯を置いて教室をみわたすと、気づかないうちにだいぶ教室内に生徒が増えていた。















+++++++++++++++++++++++++





時は少しさかのぼって―――――








「ねぇねぇ、外部の人だよね?///」

「どこから来たの?///」

「何組だった?///見てないんだったら、見てあげようか?///」

「名前はなんてゆーの?///」

「これ、私のアドレスなの///絶対メールしてね///」





・・・・・・うぜぇ。


鼻にかかったような女の高い声。

変な声つくってんじゃねーよ。

猫かぶってんの丸わかりだっつーの。




クラス表を見ていると俺の周りに女たちが群がってきた。

外部生がめずらしいのか、質問攻めしてくる。



俺はそれをフルシカトして、自分のクラス―――D組に向かった。

後ろからは「めっちゃかっこよかったね〜///」「何組なんだろう?///」という声がきこえる。





ったく。

女ってなんでそんなに外面だけみてギャーギャー騒げるのかね。

まじでうぜぇ。



廊下は人がまだ少なくていいな。

てことは、教室もまだあんま人いねーだろ。

さっさと教室いって座っとくか。





俺は時間を確認するためにポケットから携帯をだす。

そんときに、なんか一緒に紙が落ちた気がするけど


―――どーせアレだ、さっき無理やり渡されたアドレスの紙だろ。

いらねーわ。








『あのー、』


後ろから小さな足音が近づいてきて、声をかけられた。

でも、女の声だったから聞こえないフリ。




『すみませーん、』


しつけーなぁ。

しつこいオンナはまじで嫌いなんだけど。




『あのー!』


立ち止まることのない俺にしびれをきらせたのか、後ろから話しかけていた女が俺の前に立ちふさがった。



ルックスは、いい。

まあでも、俺に話しかけてくる女はだいたいが自分に自信持ってるやつだし。

美人ほど、したたかで性格が悪いのを俺は知っている。




「あ?なんだよ。」


お前もどーせ俺に近づきたいだけなんだろ。

たいした用もねーのに話しかけてくんな。





俺の不機嫌な顔を見て、女は思いっきり眉をひそめた。




『これ、落ちましたよ。それじゃ。』


そう言いながら紙を俺に押し付けて、ひとにらみして前のC組の教室に入っていった。

あいつの背中からは明らかな不機嫌オーラがでていた。








俺はちょっとびっくりしていた。



初対面の女にあんな顔されるの初めてだ。


いつも女は、上目遣いでむかつく声で≪私可愛いでしょ?≫みたいな顔で近づいてくる。

なのに、あいつは心底不機嫌な顔をしていた。

しかも、睨まれたし。


変わったやつ・・・





いや、・・・あれが普通の反応なのかもな。


落し物拾ってくれたわけだし・・・





C組ね・・・ふーん。



気づかないうちに、俺の口角はわずかに上がっていた。
















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ついに立海大に入学しました!
気づいた方も多いと思いますが、あの方と同じクラスですv