「ねぇ、そこのカーノジョ♪」
あー、どっかの誰かがナンパされてるわぁ。
日本人もチャラくなったもんだな。
「ねー、シカトはさすがに傷ついちゃうなぁ〜。」
私の肩に、何かが触れた。
あれ、もしかして・・・
ナンパされてたの私ですか!?
003 出会いはナンパ。
肩をたたかれたから、私はしょうがなく振り返った。
だって、あれじゃん?
ナンパしてくるのなんて、どーせウーロン茶(うざいロン毛茶髪)でしょ?←
私はいま、忙しいんだから。
そんなブサ男の相手なんかしてるひまない・・・っつー・・・の・・・
って、
えっ!?
まじ!?
しぶしぶ振り返った私の目の前に立っていたのは―――
イケメンでした。
優しそうな瞳、整った顔立ち、きれいなオレンジの髪。
たしかにチャラそうな雰囲気は出てるけど、この人かっこいいぞ。
でも、前髪はちょっとおもしろいな。
いい感じにはねてて。
うん、頭にハトが乗ってるみたい。←
あのアニメにでてくる、ちっちゃい白いハト。
やば、そー考えるとなんか笑えてきた。
・・・ってゆーか。
『なにか用ですか?・・・どうかしました?』
ずっと見つめ合っているのもおかしいので、私は目の前の男の人に聞いた。
というのも、私が振り返ってから彼はフリーズして見つめ合っていたのだ。
気持ち、顔が赤いような気が・・・
「あ、ごめんごめん!
あまりにも君が可愛かったから、見とれちゃってたよ〜v
こんな可愛い子に出会えるなんて、俺ってラッキーv」
わお、リアルにナンパだ。
「俺は千石清純!
キミの名前はなんてゆーの?」
んー、あんまナンパに捕まりたくないんだけどなあ。
まぁ悪い人には見えないし・・・名前くらいならいいかな。
『です。』
「ちゃんか〜v可愛い名前だねv
いまなにしてんの〜?
ひまならお茶でもしない?」
『いやー、いまはちょっと忙しくて・・・』
あの目覚めの悪い翼からの電話を切ったあと、私は買い物に来ていた。
とはいっても、初めての土地。
どこでなにを売っているのかさっぱりで・・・
どうしようかと思ってたところをこの男の人にナンパされたのだ。
―――ん?待てよ。
いいこと思いついた!
『あのー、このへんで可愛い服売ってる店知りませんか?』
この人、女好きっぽいし。
女好きの人って、こーゆーの詳しいはず!
「あれ?ちゃんってもしかして、このへんに住んでる子じゃないの?」
『そうなんですよ〜。最近引っ越してきたばっかで。』
「へぇ〜、そうなんだv
服のほかに買いたいものとかある?」
『食器とか日用品も買いたいんですよね〜。
あ、100円ショップの場所も知りたいです。』
「そっかそっか〜v
じゃあ、きょうは俺がちゃんの案内をかねて買い物に付き合うよv」
『あ、ありがとうございます!』
やった!これで迷子にならず買い物ができそう♪
この人、ここが地元っぽいし。安心安心。
いやー、正直不安だったんだよね。
てか、もう軽く迷子だったし。←
自宅マンションにも帰れないとか痛すぎるし、うん。
なんかうまくナンパにひっかかってる気がしないでもないけど。
気にしたら負けだ、うん。
「てゆーかさ、敬語はナシにしよーよv
同い年くらいでしょ。ちゃんいくつ?」
『15歳です。4月から高校生で・・・』
「え、まじ!タメじゃんv」
うそっ!?タメだったの?
チャラいわりに落ち着いた雰囲気でてるし、
服の上からでも適度な筋肉が見えて体格もいいし、
絶対年上だと思ってたよ!
「これってやっぱり運命だよ〜。
いやー、ほんと俺ってラッキーv」
さっきからこの人、ちょこちょこ"ラッキー"って言ってるな・・・
口癖かな?
なんつーか、口癖までチャラいな。
「あ、タメなんだから当然敬語はなしねv
それから、俺のことはなんて呼んでくれてもいいいからv」
『あー、うん。』
確かに、タメなら敬語はなくていっか。
でも、なんて呼べばいいのかな・・・
てか・・・
名前なんだっけ?
だって、ただのナンパだと思ってたんだもん。
聞くに聞けねーよ。
『な、なんて呼べばいいかな・・・?』
こーゆーときは、相手に提案させてもう一度名前を言わせる!
これ鉄則!
「下の名前で呼んでよv」
げっ、まさかの言わないパターン!?
どどどどど、どーしよ・・・
ここはいっちょ、あてずっぽうで言ってみるか・・・?
たしか・・・だめだ、名字はひとかけらの雰囲気も覚えてない。
下の名前はー・・・キヨなんとかだった気がする。
こんなチャラいのに"清い"とかついてるるんだー、親泣いてるわーって思ったもん。←
でもキヨの続きわからんし・・・
たぶん4文字だったよーな気がするけど・・・
うーん・・・
キヨモリはなんかすごいことした歴史上の人物だし(日本史苦手)
キヨタケはサッカー日本代表だし(ちょっとファン)
キヨシロウは5文字だし名探偵だし(知らない人が多いかも)
キヨスク?ってそりゃー駅にあるやつだ。←
「ぷっ、あはははは!」
私が一生懸命考えていたら、突然目の前のキヨさん(それは球界の番長)が笑いだした。
え?なになに?
なんか面白いことでもあった?
私が首をかしげていると、キヨさんはそれに気づいた。
「あー、ごめんごめん。
ちゃんがあまりにも百面相して考えてるもんでさ。
表情がころころ変わるのがすごい面白くて。」
まじか!
そんなに表情かわってたかな?
「それに、なんか小さい声で"清盛"とか"清武"とか聞こえるし・・・いやー、"キヨスク"はツボった!
何気に一番正解に近いし!」
キヨさんが笑いをこらえながら言った。
・・・ってか、え!?声にでてたの!?
めっっっっっちゃ恥ずかしいんだけど///
私は少し顔が赤くなって、うつむいた。
「ちゃん、めっちゃ面白い子だな〜v
顔赤くしたところも可愛いしv
まじで俺、惚れちゃうわv
いやー、ほんと運命だねvラッキーv」
惚れちゃうって・・・
あー、この人やっぱチャラいわ。
この人相手に照れるのもアホらしいな、うん。
よし、キヨは合ってるっぽいから、もうキヨでいーや。
『じゃー、キヨって呼ぶからね!』
目の前でまだ私のことを見て「ほんと可愛い〜vちゃんいいわぁ〜v」などと言っているキヨの言葉を遮って言った。
「うん、いーよvよろしくね、ちゃん♪」
キヨは私のほうを見てニコッと笑った。
優しくて、安心する笑顔。
さっきまでのニヤニヤした顔ではなくなっている。
なんだ、そーゆー顔もできるんだ。
一瞬だけ、
ほんの一瞬だけ、ドキッとした。
「じゃ、そろそろ買い物いこーかv最初は服かな?」
『あ、うん。お願いしま〜す!』
「こっちだよ。」
キヨが指差したほうに2人並んで歩いていく。
キヨは歩きながら道端のお店などを紹介してくれた。
やっぱ、キヨに案内してもらって正解だったな。
会話も楽しいし、さりげない優しさが嬉しい。
歩調も合わせてくれてるし。
背が高いキヨは、身長150なかばの私とじゃ、気をつけてなきゃ先行っちゃうでしょ。
気にしてくれてるってことだよね。
うーん、良いやつv
「あ、そーいえば。俺の名前、覚えてないでしょ?」
キヨが隣を歩く私を見ながら言った。
『あ、バレてた?』
結局"キヨ"が入ってるってことしか思い出せてないんだよねー。
「最初っからわかってたよ。
俺の名前は千石清純。今度こそ覚えてねv」
最初からわかってんなら言えよ!
絶対おもしろがってたな、こいつ。
「清純(せいじゅん)と書いてキヨスミだからvよろしく〜♪」
キヨは笑顔でそう言った。
こんなやつが清純なんて、世も末だな。
親は、清純くんがこんなチャラい息子に育つなんて予想外だったろーな。
ママン泣いてるぞ。←
「あ、あのへんがファッションビルとかいっぱいあるとこだよ。」
『このへんにあるのか〜。覚えとかなきゃ!』
知らない土地でちゃんと買い物できるか心配だったけど、キヨと出会ってから不安は全くなくなっていた。
キヨは話しやすくて、もうすっかりうちとけている。
知り合いができてほんと良かった♪
このあとキヨには、デパート、100円ショップ、スーパーにまで付き合ってもらった。
この日の買い物は、キヨの案内のおかげで順調にすすんだ。
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初登場キャラは千石でした!
設定上、この物語の中では千石の通う山吹中、高は神奈川県にあります。
ご了承ください。