(注意:この小説の設定上、山吹中学校・山吹高校は神奈川県にあります。ご了承ください。)
今日もいい天気だな〜v
山吹中学校を卒業したのは、もう3週間くらい前になる。
エスカレーター式の学校ではなかったから、離れ離れになる友達も多かった。
だけど、不思議と寂しくはなかった。
あ、可愛い子と離れちゃうのはモチロン残念だけどねv
003.5 買い物デート。by千石
今の時期の俺たちは、中学校は卒業して、高校には入学していない。
なんだか、宙ぶらりんな気分だ。
ま、高校に入学してないとはいっても、もう山吹高校のテニス部の練習に参加はしている。
少しでも練習休むと身体がなまるし。
それに、早くレギュラーになりたいからねv
一緒に参加しているメンバーには、地味'sの2人に加えて亜久津もいる。
亜久津は一時期、手をつけられなかったけど、今は前よりはまじめにやってるみたいだ。
前よりは、だけどねv
でも、根はいいやつだし。
テニスも上手いし。
やっぱ、同じ学校ってのは心強いね。
でも、今日は先輩たちが他県に練習試合にいってて俺たちの練習はお休み。
こんなに良い天気だからテニスしないのはもったいないけど、休息も練習のうちだし。
今日は駅のほうに買い物ついでに可愛い女の子見つけてこようかなv
と、意を決して家をでたのが1時間くらい前。
俺はいま、駅前をぶらぶら(女の子を)物色している。
さすがに春休みだから人が多いな〜。
あ、あの子可愛いv
なんだ、彼氏持ちか〜
あの子たちスタイルいいなぁ〜v
今日はとくに可愛い子がいっぱいいるv
どの子に声をかけようかなv
―――――ん?
きょろきょろあたりを見回していた俺の視線は、一人の女の子の後ろ姿に止まった。
後ろ姿からは、小柄でスタイルが良さそうなことしかわからない。
だけど、不思議とひきつけられるものがあって。
俺はもう彼女から目が離せなかった。
どうしても顔が見たい。
俺は気がついたら、その女の子に近づいて声をかけていた。
「ねぇ、そこのカーノジョ♪」
声をかけるとき、いつもより少しだけ緊張した気がする。
彼女は振り返ってくれない。
後ろから呼んだから、気づいてないのかな?
「ねー、シカトはさすがに傷ついちゃうなぁ〜。」
俺は、彼女の小さな肩に手を置いた。
彼女が振り返った瞬間、俺は心臓がとまるかと思った。
白く透き通るようなきれいな肌に、大きな瞳。
全体的に整った顔は、可愛らしい印象を持たせる。
明るめのブラウンの髪が彼女の動きに合わせてサラサラ揺れる。
目の前にいる女の子の可愛さに、俺の心は完全に奪われていた。
体が固まってしまい、目をそらすこともできない。
『なにか用ですか?・・・どうかしました?』
彼女は、フリーズしている俺を不思議そうな顔で話しかけてきた。
首をかしげて、自然と上目遣いになっている。
その顔も、超絶可愛いなあ〜///
って、じゃなくて!
「あ、ごめんごめん!
あまりにも君が可愛かったから、見とれちゃってたよ〜v
こんな可愛い子に出会えるなんて、俺ってラッキーv」
第一印象は大事だからねv
こんな可愛い子に変なヤツだと思われるのいやだし。
彼女はちゃんっていうらしい。
ほんと、名前まで可愛いやv
でも、可愛いだけじゃなくて性格も良いんだよ〜。
たまに心の声がもれてて面白いしv
キヨスクって・・・ねぇ?
ま、俺の名前もちゃんと覚えてくれたみたいだし。
面白くて超良い子v
それから、最近このへんに引っ越したばかりで困ってるみたいだったから、一緒に買い物にいくことになった。
ちゃんと今日1日デートできるなんて。
やっぱり俺ってラッキーv
ちゃんと歩きながらいろんな話をした。
神奈川の高校に通うって聞いたから、もしかしたら学校一緒なのかもv
と思って聞いてみたら違ったんだ。
ほんとアンラッキー。
でもよく考えたら、学校違うってことはここでじゃないと出会えなかったってことだよね!
今日会えたのは奇跡だねv
俺ってやっぱりラッキーv
買い物を始めてからかなりの時間が経って、2人の両手にはたくさんの荷物がぶらさがっていた。
『ごめんね、荷物持ちまでさせちゃって。』
「いいよいいよ。俺が好きで持ってるんだから。
ちゃんみたいにか弱い子に重たいものもたせるわけにはいかないって。」
春なって日が長くなってきたものの、東のほうはだいぶ暗くなり始めていた。
「そろそろ日が暮れてきたね。帰ろっか?送ってくよv」
『あ、最後にもう1件いい?』
ちゃんが、最後にいきたいと言ったのはスーパーだった。
親に頼まれたのかなー、なんて思ってたけど、肉やら野菜やらの食材を物色している様子を見ているとそうでもないらしい。
「家ではちゃんが料理するの?」
俺は買い物かごを片手に持って、卵を選んでいるちゃんに聞いた。
『うん。てゆーか、一人暮らしなの。だからご飯とか自分で作んなきゃ。』
「え!?一人暮らししてんの!?」
『うん。まだ始めたばっかだけどねv』
ちゃんはニシシ、と得意げに笑って卵をかごに入れた。
あ、その顔も可愛いなあ・・・///
でも、高校1年生で一人暮らしって・・・
大変そうなのに、ちゃんは本当すごいな〜
てゆーか、こんな可愛い子が一人暮らしなんてして大丈夫なの!?
そのあと、ちゃんの住むマンションまで送ることになった。
といっても、ちゃんはスーパーをでたとこで悪いからいい、っていってたけどね。
もうかなり暗いし心配だったから半強制的に送ることにしたんだけど。
なにより、もっと一緒にいたかったしv
『あのマンションだよ。』
ちゃんは、少し先に見えるマンションを指差した。
俺たちはそのマンションに向かって歩いていく。
「あそこか〜。ほんとに一人暮らししてるんだね〜。」
『まあねv』
「料理とか掃除とかできんの?」
『んー・・・これから頑張る?』
ちゃんは首をかしげながら俺を見た。
身長差で必然的に上目遣い。
「ソレ、俺に聞いちゃう?///」
狙ってるわけじゃないんだろーけど、そーゆー仕草ひとつひとつがほんと可愛い///
今度は俺の返事を聞いて、あはは〜と笑っている。
『でも、ほんとに今日はありがと!』
マンションの前についてちゃんは立ち止まって俺のほうを向いた。
「俺のほうこそ、ちゃんと過ごせて楽しかったよvありがとう。」
『ううん。私一人じゃ、こんなにスムーズに買い物できなかったし!
キヨがいてくれて助かった!』
「ちゃんにそう言ってもらると俺も嬉しいよv」
『私、引っ越してきたばっかりで、ここに知ってる人とかいなかったから
―――――キヨは私の、友達第1号だv』
そう言ってちゃんは、俺の顔を見ながらふわっと笑った。
その笑顔を間近で見た俺は、時間が一瞬止まったのかと思った。
心臓がぎゅっとにぎられる感じ。
顔にだんだん熱が集まってくるのがわかる。
赤い顔を見られるのが恥ずかしくって顔をそむけたいけど、目が離せない。
そのくらいちゃんの笑顔に心奪われてたみたいだ。
俺、決ーめた!
絶対に友達第1号から、恋人に昇格してやる!!!
ま、でも今は友達第1号でいいや。
気長に頑張るよv
バイバイのとき、困ったことがあったらいつでも連絡してってことでアドレスも交換した。
ちゃんはほんとうに良い子だなv
最初に外見に惹かれたのは確かだけど、中身もまじで完全に俺のタイプ!
しっかりしてて気が利いてるのに、ちょっとおバカなところが良いv
でも、やっぱりイチバンは、ちゃんの笑顔!
あの笑顔を目の前にして、心臓がバクバクしすぎて破裂しそうになっちゃったよ。
今日1日しか一緒にいなかったけど、俺はもうちゃんに夢中かもv
今日はほんと、部活休みで良かったな〜
休みじゃなかったらちゃんとも出会えてなかったわけだし。
んー、俺ってやっぱりラッキーv
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003話の千石視点でした。
次はあの人が登場します!